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先日、とあるきっかけで知り合ったライターさんから「海外就職」をテーマにしたインタビューを受けた。

そもそもなぜ高校生で留学をしたのか、大学院生の時の海外インターンはどうだったかなど、次々に質問が飛んでくる。私は一所懸命あーだこーだと回答し、ついにテーマは本題の海外就職にたどり着いた。

 

海外で働くことと、日本で働くことの違いは?

 

「海外で働いてみて、どんなところが日本と違いますか???」

「そうですねぇ・・・。」

そこまでスラスラ答えていた私だが、この質問は少し時間が必要だった。おそらくこの質問は

「ええ、全然違いますよ!仕事のやり方や文化も違って、とてもエキサイティングでグローバルで、カクカクシカジカで・・・」

といった感じの回答が期待されている。しかし、私の答えはとてもこんなキラキラした期待に応えらえるようなものではなかった。なので、ちょっと長くなるが、私の失敗談を交えて正直に話すことにした。

 

憧れの海外勤務に対する勝手な妄想

私が海外転職を目指した一番の目的は、国連で働くための実力をつけておきたかったからだ。学生時代に国連でインターンをした時に、そこで働く人々のレベルの高さに圧倒された。

世界中からあらゆるプロフェッショナルが集まっているのだから当然といえば当然なのだが、それ以上に自分の力の無さを痛感し、大きな挫折を味わった

以来、仕事力を磨くことと、海外というフィールドで実務経験を積むことが目下の目標となっていた。

シンガポールでの就職が決まった後、私は完全に期待値を高めすぎていた。憧れの海外勤務。海外での仕事=国連の仕事と勝手にイメージを膨らませていた。

 

毎日困難の連続で、英語のレベルも全然追いつかなくて、会議についていけなくて、泣き出したくなるような厳しい毎日だけど、やりがいを感じる。金曜の夜には志を同じくしたプロフェッショナルな仲間とPubに出かけ、国際情勢について議論する、みたいなやつだ。

 

でも、お気付きの通り現実は全然違った。違ったというより、私の妄想が行き過ぎていた。

 

3ヶ月でぶちあたった海外就職の壁

就職した会社はそもそも日系企業。英語のネイティブスピーカーである欧米人は社内に一人もいない

職種は日系企業向けの営業。応募した求人票には、新規設立企業で”Business Development”担当と書かれていたので、てっきり事業開発=Business Developmentを任されるのだと思っていた(前職が事業開発部署だったので)。しかしそれはどうやら間違いで、新規顧客開拓という意味でのBusiness Developmentだった

 

前職で軍隊のような新規開拓営業に耐えようやく違う事業開発部署に異動できたのに、また新規開拓営業に自ら飛び込んだのか・・・なんてバカなんだ・・・と一瞬恨んだが、前職でもそれなりにやっていたので、成果を出せる自信はあった。

 

しかし、なかなかうまくいかなかった。

 

英語力が足りない?いや、英語がネイティブではないシンガポールでは私の英語力でも十分通じる。お客さんも日本人ばかりだ。

現地スタッフとの連携がうまくいっていない?いや、確かにうまくいく人といかない人がいるけれど、それは国籍の問題じゃない。日本人でも相性の問題はある。

慣れない海外生活からのストレスか?いや、むしろ想定以上にスムーズにシンガポールライフをスタートできた。

 

じゃぁ一体何が問題なのか。3ヶ月が経ち、成果が出ないことにも焦っていたが、実はもっと違うところで焦りやイライラが募っていたのだった。

 

一番の悩みは「日本」との違いではなく「前の会社」との違い

前職を辞める時、尊敬する大先輩から「次の職場に、現職の価値観を持ち込んじゃいけないよ。素直な気持ちで取り組むことが何より大事だよ」という言葉をもらった。

言われた当時は「ふーん、そうなんだ」くらいにしか思っていなかったが、先輩の予言(?)は見事に的中した。

 

前職は経営コンサルタントだったので、お客様は中小企業の社長や経営幹部が多かった。社長から経営上の課題を聞き出し、提案型営業をするようみっちり訓練されていた。それが正しい営業スタイルだと信じ込んでいたし、そのやり方しか知らなかった

しかし、新しい職場(日系の人材紹介会社)で担当を任されたのは大手企業ばかり。決済者に会うことはできても、彼らの多くは片手間で採用を担当している。経営上の課題を洗い出して、採用戦略を考え直そうなんてコンサルちっくな営業は全く求められていない。企業側からすれば、とにかく少しでも引っかかりそうな人材の履歴書をバンバン送ってくれればいい。

 

しかし、コンサル時代に叩き込まれた思想と営業スタイルが抜けない私は、人材紹介ビジネスにおける営業の成功パターンを受け入れることができず、なかなか成果を上げることができなかった。仕事のやり方や思想を巡って、上司とも何度もぶつかった。

 

結局海外就職で私が一番苦労した点は、前職の成功体験にとらわれてしまい、新しい職場の文化や仕事のやり方を素直に受け入れられなかったということだった。何度思い返しても「海外」という切り口で悩んだ記憶はほとんどなく、どれも仕事のやり方や組織文化やに対する不平・不満だったのだ。

 

 

まとめ:転職をしたら、前職の成功体験を捨てよう

冷静になった今、そもそも会社の規模も成長ステージも違う会社を比べること自体が間違っていたと、素直に反省することができる。しかし当時は、先輩のアドバイスは常に頭の片隅にあったものの、行動に移すのはすごく難しかった

正直、海外で働いていた1年が、ものすごくキャリアアップにつながったかというと微妙である。しかしこの経験からとても大事なことを学んだ。それは、結局「海外」とか「日本」とか場所の問題より、「業務内容」や「組織文化」が自分にとってはものすごく重要だ、ということである。

 

海外で就職すると確かに生活はガラリと変わり「私、今海外にいるぞー!」という感覚を味わうことができる。しかし働き盛りであれば、一日のほとんどの時間を仕事に費やすことになる。であれば、私のように海外勤務に誇大な妄想を抱かず、しっかり会社研究や職種研究をするべきだ。

それでも新しい職場が合うかどうかは、実際に働いてみないとわからない。転職をしたら、それまでの会社の価値観に囚われず、素直な気持ちで仕事に臨むことがとても大切だと思う。

 

■筆者Facebookアカウント http://www.facebook.com/rie.oshima.520(フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)

1985年生まれ 東京都出身

経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールの現地法人へ転職し採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのちフリーランスとして独立。現在は開発コンサルタントとして国際開発援助やソーシャルビジネス支援に従事。