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渋谷の街がハロウィンの仮装をした若者でごった返していた先週土曜日。

私は同じく渋谷のとあるビルの控え室で、久しぶりに腕を通したジャケットに窮屈さを感じながら、一人座っていた。

その日はキャリアカウンセラーとして「世界しごと博」というイベントに参加していた。海外で働きたい若者たちの就職相談に乗る仕事だ。

私のブースには「U to GO、フリーライター、大島里絵」とA3サイズのポスターが貼られていた。

(フリライターが何でキャリアカウンセリング? そもそもお前は何者なんだ)と、思わず自分で突っ込んでしまった。U to GOなんて “いかにも” な名前も恥ずかしい。会社名でも何でもないこのブログのタイトルを何でよりによって横文字にしてしまったのか、どうせなら「東京底辺日記」とか「三十路BBAのつぶやき」とかもっとバカっぽい名前にすればよかった、などと後悔しながら席についた。

 

しばらくして一人目の学生が相談に来た。小柄だがエネルギーに溢れる感じの女性で、意思の強そうな瞳が印象的だった。就職を半年後に控えて、改めて進路を悩み始めてしまったという。

彼女の悩みを「ふんふんふんふん、へーそうなんだー、なるほどねー、それは悩むよねー」と真剣に聞いているうちに、後ろにはチラホラ相談者の列ができていた。

ちょっとした占い師になった気分で学生の相談に乗るうちに、気づけばあっという間に2時間が過ぎていた。

 

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全く参考にならないことを事前に断った上で、頂いた相談内容例と私の回答を紹介したいと思う。

・「やりたいことがわかりません。」

→「そんなの簡単にわかんないよね。私だってやりたいことしょっちゅう変わるし。とりあえず少しでも興味あることやってみたらいいんじゃない? やってみないと、やりたいかどうかも判断できないっしょ!」

 

・「飽きやすい性格なんですけど、それじゃダメでしょうか」

→「飽きっぽいってことは、好奇心旺盛とも捉えられるよね。もうそれは性格だから仕方ないよ。潔く受け入れて、好奇心の赴くままに生きて行くのはどうかな?」

 

・「今の仕事を辞めて、旅人になりたいです」

→「素晴らしいじゃないですか! 是非なってください。」

 

・「え……? 旅人になって食べて行けるんですか?」

→「旅をしながらブログで生計を立てている人はいるんじゃないかな。一般論じゃなくて、自分はどれくらい稼げれば満足なのか、まず考えてみるのはどう? 保証はできないけど、死にはしないよ!」

 

・「やりたいことはあるんですが、自分の実力不足を感じます」

→「学生が能力を気にする必要なんて、全然無いんじゃないかな。出来る/出来ないよりも、やりたいかどうかで判断した方が楽しいんじゃない!」

 

ご覧の通り、私の回答は呆れるほど精神論に徹している。しかも “世界しごと博” なのに、海外の話ほぼなし。

「ありがとうございます! 早速実行に移します! 今日、本当にお話しを聴けてよかったです!!」

え? 早速実行に移すの? 旅人になるの? まずい。かなり無責任なことを言ってしまったかもしれない。一応「あくまで私個人の意見なので」と念押ししたが、すでに気持ち良くベラベラ説教してしまったので、後の祭りである。

 

嬉しそうな顔をして席を後にする青年の背中を、10年前の自分に重ね合わせながら眺めていた。鼻の奥のあたりがツンとなって、思わず「頑張れよ」と心の中でエールを送った。

 

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さて、今回数人の若者と話してみて、こんなことを思った。

彼らが求めているものは、具体的なアドバイスじゃない。一歩前に踏み出す勇気と、背中を押してくれる人の存在だ

よくよく聴けば、みんなやりたいことはわかっている。でもそれを「やったらいいじゃん」と言ってくれる誰かの許可を待っているようだった。

中には「何でフリーライターやってるのか」と質問してくる子もいた。確かに、海外に留学・就職までしてなぜ今フリーライターなのか。疑問に思って当然だ。

でもおそらく本当に聞きたかったのは「どうしてそんなに無計画な人生を送っていけるのか」だったんじゃないかと思う。アナタみたいに転々と職を変え、やりたいことに忠実に生きても許されるんですか、と。

確かにネットに溢れる社会人のインタビュー記事は、一直線の成長物語が多いように感じる。時間は過去から今を通り、輝かしい未来へ繋がる直線的なストーリー。それはそれで素晴らしい。

ただ全然一直線に歩けない、戻ったり止まったり、同じ所をずっとぐるぐるしちゃうような大人がもっと居ても良いのではないだろうか。

どうしようもない大人が無計画人生をさらけ出して「あー、この人に比べれば、俺まだ全然ドン底じゃないな。まだ行けるな」って思えるならば、それもそれで一つの背中の押し方なのではないだろうか。

仮装はしてないのに、もの珍しい動物を見るような目つきで私の話を聞く学生を見て、そんなことを思ったのでした。

 

 

1985年生まれ 東京都出身

経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールの現地法人へ転職し採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのちフリーランスとして独立。現在は開発コンサルタントとして国際開発援助やソーシャルビジネス支援に従事。