「ゴウセツでグルディスがあって〜」

「ガクチカで何書けばいいかわからなくて〜」(※1)

若者用語をバンバン繰り出し、屈託のない笑顔で私に老化を感じさせてくる彼女は、就活真っ最中の後輩である。

彼女とは、以前勤めていた会社で知り合った。若者の感覚をSNSマーケティングに存分に取り入れ、インターンとして立派に活躍してくれた。

とにかく明るくて面白い。表情がクルクル変わり、見ていて飽きない。教えたことは素直に実践し、少しでも成果が出るとすぐに満面の笑みで報告してくる。

「大島さ〜ん、わからないんですぅ」と猫なで声で甘えられた日には、「しょうがないなぁ〜」とまるでオッサンのようなデレデレ顔で手取り足取り教えてしまう。

気持ちよく一緒に働ける、まさに理想の新入社員だ。

 

そんな彼女が就活も佳境になり、おそらく壁にぶつかったのか「私の強みを教えてください」と涙ながらに聞いてきた。

私はとても真剣に「明るくて面白い。最大の強みは愛嬌じゃないかな」と答えた。

すると彼女は目をまん丸に見開き「え? 愛嬌って強みになるんですか???」と聞いてきたのである。

 

成功する社長の条件は○と○○

愛嬌の話になると、いつも思い出す場面がある。それは私が社会人2年生の頃。トップコンサルタントの先輩に同行した時のことだ。

顧問先は社員数20名規模のIT企業。社長は元エンジニアの30代の男性で、良い意味で大変ユニークな人だった。

コンサル後の帰り道、先輩は急に「あの社長はなんだかんだで上手くいくと思う。大島さん、成功する社長の条件ってなんだと思う?」と聞いてきた。

私は突然のクイズに頭をフル回転させながら、それっぽい答えをひねり出した。

「営業力があることですか?」「ブー」

「マネジメント力があることですか?」「ブー」

「……ビジネスモデルが考えられることでしょうか?」「ブー、全然遠い」

全くの不正解。どうにもわからなかったので、さっき訪問した社長を思い浮かべながら、

最強の運の持ち主であること、ですか?」と言ってみた。すると先輩は「ピンポンピンポン、大正解!」と良いながら拍手をして、一言付け加えた。

「でもね、大島さん。実は、もう一つ大事な要素があるんです。それは”愛嬌”です。」

 

愛嬌には人と情報が集まってくる

この”運”と”愛嬌”という話は、松下幸之助が松下政経塾を作った時、採用基準として挙げた二つの要素として有名だ。

私がこれまでお会いした経営者やリーダーシーップに溢れる方々は、みんなどこか愛嬌のある憎めない人たちばかりである。

***

昔の上司に、愛嬌の代表格と呼べるような人がいた。大変失礼だが、彼はパッと見めちゃくちゃ優秀なビジネスパーソンには見えない。

むしろ整理整頓が苦手で、机の周りはぐちゃぐちゃ。常に本が20〜30冊平積みされており「また雪崩がおきてますよ!」と定期的に部下から叱られていた。

時間にもルーズで遅刻はデフォルト。商談にも平気で遅れてくるので、同行をお願いするこちらはいつも冷や汗をかかされていた。

それなのに、彼は会社一の稼ぎ頭で、いつもお客様から愛されていた。

商談では何かすごい知識を広げる訳でもなく、ただ穏やかに雑談している(ように見える)。しかし一時間後にはしっかりと相手の懐に入り、仕事の話に繋がっていく。この人はほぼ愛嬌で仕事をとっているのではないか、と思うほどだった。

お客様だけでなく同僚からも愛されていた彼は、いつも誰かに話しかけられていた。誰よりも忙しいはずなのに、嫌な顔一つせず笑顔で話を聞いている。すると自然に彼の元へ情報が集まっていき、新たな仕事が生まれていくのである。

そんな上司の仕事ぶりを真横で見ていて、「愛嬌はとてつもない武器なんだ」と私は実感した。

 

運と愛嬌はひとつのセット

愛嬌とは、接っしていて好感が持てる様子のことである。決してお笑い芸人のように、いつも賑やかで面白いという意味ではない。

愛嬌を生まれつき持っている人もいるかもしれないが、そんな人はほんの一握りだと思う。

というより「この人と一緒に働きたい、また仕事を依頼したい」と相手に感じてもらうため努力しているうちに、身につくのではないのだろうか。

それはそれは穏やかで誰からも慕われる経営者が、実は昔は厳しさ一辺倒の鬼上司だったというエピソードを明かしてくれた。厳しさを振りかざしても誰もついてこないという失敗を経て、現在の愛嬌を身につけたという。

「運」とは決して、怪しげな超常現象のことを指しているわけではない。「運」とは文字通り、「運ばれてくる好機」である。そして「好機」を運んできてくれるのは、自分のことを気に入ってくれている、良好な関係を築いている他人にほかならない。(※2)

そう考えると、なぜ松下さんが運と愛嬌を重視したかがわかる。愛嬌がある人とない人では、愛嬌がある人の方が、断然運を運んできてもらえるのである。

つまり運と愛嬌はセットなのだ。

***

冒頭の後輩はこの会話の1ヶ月後に、「とりあえず一社、内定をもらいました〜!!」と得意の笑顔で報告してくれた。

神からの贈り物なのか、努力して身に付けてきたのかはわからないが、いずれにせよ彼女は愛嬌という無敵の強みを持っている。

その最強の武器を使って運を引き寄せ、多くの人に愛されるビジネスパーソンへと成長し、いつか一緒に働けたらなー(そして運のおこぼれにあずかれたらなー)と思っています。

 

※1

ゴウセツ:合同説明会の略称

グルディス:グループディスカッションの略称

ガクチカ:学生時代に力を入れたことの略称

※2

 

1985年生まれ 東京都出身

経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールの現地法人へ転職し採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのちフリーランスとして独立。現在は開発コンサルタントとして国際開発援助やソーシャルビジネス支援に従事。