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知り合いの経営者から、こんな相談を受けた。

 

「うちの営業がさ、お客さんの話を全然聞き出せないんだよ。どうしたもんかね。」

「話を聞き出せないっていうのは、具体的にどういうことですか?課題を聞き出せないとか?」

「いやいや、そんな高度な話じゃないよ。会話が続かないというか、雑談すら出来ないレベルなんだよ。」

 

ふむ。

人の話を「聞く」のが苦手な人は多い。一般的に「聞く」という行為は、話す行為に比べて受け身に見えるため、誰もができると勘違いしてしまう。

だが実際、相手の話をちゃんと聴くにはそれなりの技術が必要だ。

まして営業パーソンが、1時間という限られた時間の中初対面の人の心を開き、相手の課題に共感し、信頼して話してもらうようになるには、相当の訓練が必要である。

 

「大島さん、取材とかして色んな人の話聞いてるでしょ。なんかコツとかないの?」

ふむ。

今でこそライターとして、人の話を聞く行為自体が仕事になっているが、聞く技術を身につけたのはいつだろう。

おそらく前職のコンサルタント時代だと思う。

 

 

聴くモードスイッチを入れる

新人コンサル時代、まず最初に叩き込まれたのが「商談は59分間聴いて、1分で提案しろ」だった。59分とは極端だが、要はそれだけ聴くことが重要ということだろう。

 

話が聴けない人の本質的原因は、相手に興味がないからの一言に尽きる。

「私ね、昨日XXっていう映画観に行ってきたの〜! すごい面白くてね、主人公が…」

「あ、俺もその映画見たよ! でも俺的には○○って映画の方がオススメでさあ〜」

 

オススメでさあ〜、じゃない。

オススメの映画の話をしたい気持ちはわかるが、相手の話を遮るんじゃない! 奪うんじゃない! と言いたい。聴くのが苦手な人の多くは、大体こんな感じで話すのが好きだ。

人は誰でも自分のことを話したいし、聴いてもらいたい。だからこそ、相手の話を聴く時は「これから聴くぞ」とスイッチを入れる。途中で言いたいことが頭に浮かんでも、とりあえず最後まで聴く。

相手の話がどこに向かうのかさっぱりわからず、こんなに聴いてんのにコレ終着点どこなんだとイライラしてきても聴く。しゃべり好きのあなたが、普段どんなに相手をイライラさせているか気づくだろう。

 

 

自分のダメな部分を先に開示する

とはいえ、聴くモードスイッチONの状態でひたすら黙っていれば良いというわけではない。

たまに相手が全然話してくれない時がある。私の経験上、これは相手がめちゃめちゃ緊張しているか、めちゃめちゃ警戒しているかのどちらかである。

例えば学生を面接する時。緊張から、尋常じゃないほど汗をかく男子生徒がいる。

そんな時は「就活大変ですよね〜。私も学生の時は御社と弊社を間違って使ってて、面接で注意されましたよ〜」と、あえて自分の失敗談を話す。すると相手の緊張が徐々にほぐれていく。

またザ・中小企業のオヤジ社長が”コンサルタント”を警戒している(あるいは姉ちゃん、何しに来たんやみたいな感じで威嚇してくる)時。

「実は私の父も小さな会社を営んでたんです。でも、全然うまくいかなくてお母ちゃんを困らせて大変でした」みたいなことを自ら話す(ちなみに実話)。

 

そうやって自分のダメな部分、恥ずかしい部分をあえて先に開示することで、相手の心が開いていく。

アメリカ人心理学者のザイアンス曰く、人間は知らない人に対しては攻撃的・冷淡な対応をするが、相手の人間的な側面を知ったとき、強く好意を持つようになる

完璧に聴き出してやろうと気負うと失敗する。ちょっとだけおバカな一面を見せて、相手の緊張をほどいてあげよう。

 

過去のこれまでの人生を聞く

「何を聴いたらいいかわからない。何を質問すればいいですか?」という人がいる。

 

いやいやいや、あるでしょうよ、聴きたいこといっぱい!

目の前に一人の人間が居たら、聴きたいこと山ほど出てくるはずだよ。私なんてこの前友達と山登り行ったのに、眼前に広がる草紅葉もよそに、風景写真を撮りまくるおっさん達の群ればっかり見てたんだから。

 

気にならないのだろうか。目の前の人がどこで生まれ、誰の影響を受けて育ち、どんな縁があって、なぜ今、ここで何しているのか。

 

冒頭で「話が聴けない人の本質的原因は、相手に興味がないから」と書いたが、そーゆーことである。

もし技術的な手法を知りたいのなら、相手の過去について「なぜ?」と「どうやって?」をひたすら繰り返せばいい(※1)。

ここで大事なことは「いつ」「どこで」「誰が」「何を」という情報よりも、「なぜ」「どうやって」の方に注意して質問することです。

「なぜ」「どうやって」には、相手の人となりが出ます。

(中略)

「その人」につながる話は、「情報」を聞いても出てきません。「理由」「行動」「気持ち」を聞くと、その人らしさが引き出せて、会話が広がります。

 

もし営業で初めましての社長と話すなら、

「素敵な会社名ですね! なぜこの名前をつけたのですか?」

「面白いサービスですね! どうやってこの事業を立ち上げたのですか?」

とか、いくらでも応用が効く。

一瞬だけ目をつむって、相手の人生に思いをはせてみる。相手の心情に寄り添ってみる。そうすれば自然に会話は続くはずだ。もしできないというのであれば、残念ながらあまりにも想像力が乏しいと思うのだが、どうだろうか。

 

※1 表紙でなんとなく損している感じはありますが、中身はしっかり面白いです。

 

1985年生まれ 東京都出身

経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールの現地法人へ転職し採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのちフリーランスとして独立。現在は開発コンサルタントとして国際開発援助やソーシャルビジネス支援に従事。