フリーランスとして独立してしばらく経つ。振り返ってみると、本当に色々なことを学んだ。
当初は立ち回り方など全くわからず、たくさん失敗した。そのたび周りに助けられ、なんとか今日まで生き伸びてきた。
試行錯誤の末、ようやくフリーとして働く心構えみたいなものが見えてきたので、この機会にまとめてみたいと思う。
もしフリーランスとして独立、あるいは副業を考えている人がいれば、少しでも参考になれば嬉しい。
マイ・ルールを確立する
結論から言うと、フリーランスにとって大事なのは、早めにマイ・ルールを確立することだと思う。
あくまで「マイ・ルール」なので、自分が納得していれば何でもいい。
参考までに、私が仕事を受けるときのマイ・ルールは以下の2つである。
1.仕事内容は出来るかよりも、面白いと思えるか
2.報酬はやる気の出る金額か
この2つに当てはまらない時は、たとえどちらか一つが超好条件でも断るようにしている。
ルール1.仕事内容は出来るかよりも、面白いと思えるか
フリーランスの魅力。それはなんといっても仕事を選べる自由だ。その自由を謳歌するためには、仕事を選べる人材にならなければならない。
当たり前だが、フリーランスは自分が商品。
最初のうちは裸一貫、自分の力量だけで勝負することになるだろう。では、その力量をどうやって上げていくか。答えは簡単、ひたすら仕事をするしかない。
ただ忘れてはならないのが、一体何の仕事にひたすら取り組むのかという集中の問題である。
あなたの得意技は、人を唖然とさせるものでなければならない。非凡な技、ゼニが取れる技がなければ、ブランド人にはなれない。
(中略)
あれもこれもと欲張ってはいけない。「これなら自分にも何とかやれそうだ」あるいは「自分にはこれしかない」と思えるものをひとつ選ぼう。
選んだら、さっそくエンジンをかけよう。きょうからさっそく、自分の「非凡な」技に磨きをかけよう。自分の「売り物」を、公言し、宣伝しよう。
トム・ピーターズ 著『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 1 ブランド人になれ』(CCCメディアハウス)
何かに「集中する」と覚悟を決める
私は最初、集中の重要性を全く理解していなかった。
とにかく自分が能力的に「出来る」と判断した仕事は、何でも引き受けた。英語の教材を翻訳したり、新規事業の立ち上げを手伝ったり、人材紹介の営業代行をしたり、採用のお手伝いをしたり…。
当然、時間、つまりはフリーランスが持っている唯一の資源が分散し、何かに秀でることは出来ない。
また、それなりの力量しかないと、それなりの金額の仕事しか回ってこない。それなりの仕事をそれなりの金額でやる。
それでは会社員と変わらない。自分が何をやりたいのか、何のために独立したのか、わからなくなってしまった。
だからある時、自分は何の専門家になるかを決断し、継続することが大事だと気付いた。いわゆる「覚悟」というやつである。
面白いと思えるものに腹をくくる
ではどうやって覚悟を決めるのか。
色々やってみてたどり着いた結論は、自分が「面白い」と思えるものに腹をくくる、ということだ。
なりふり構わず仕事を受けいていた時、唯一「面白い」と思える仕事がライティングと講師だった。他の仕事もそれなりに楽しめたが、書いている時、誰かに何かを教えている時だけは時間を忘れて没頭した。
サラリーマン時代に抱いた「やらされ感」はほとんどなかった。
- 一つに集中すればするほど、その仕事の質は上がっていく
- 「好き」とか「面白い」と思えない仕事は続かない
- 続かなければ力は伸びない
このことに気付いてから、ライティングと講師の仕事以外は受けないことに決めた。
いま最も時間を投資している仕事が、将来の自分を形作るのだ。
ルール2.報酬はやる気の出る金額か
自分の値段はいくらか。
もしあなたがフリーランスを目指すなら、この質問に明確な自信を持って答えられなければいけない。
フリーランスは値決めが命と言われるが、私は最初、それが何を意味しているのかわかっていなかった。
そりゃ人材紹介の仕事をしていたくらいだから、転職マーケットにおける自分の値段がどれくらいかは知っている。
一般的に年収は年齢、業界、ポジションに規定されるが、もっと生々しい話をすれば、学歴、新卒で入社した会社、前職の給料、既存社員の給料とのバランスによって決まる。
つまり、その人が持つピュアな能力だけで決まることはない。
会社員として人材紹介の仕事をしていた時は、そんなのバカバカしいと思っていた。会社のブランドとか、肩書きとか関係ないじゃん、実力で勝負しようよって。
ところがどっこい、独立して会社の看板が外れた途端、自分の自信が揺らぎ出す。
これまで真面目に仕事してきたじゃないか、大丈夫だいじょうぶ、自分には実力があるんだから。……いや、本当に? 本当に私はこの年収に値するだけの仕事をしてきたのだろうか。ここで高い値段を言ったら、誰も私に発注してくれないんじゃないか。「この値段でこの仕事!?」って怒られるんじゃないか。
もう、そんなことを考えれば考えるほど、自分の値段がわからなくなってくる。
やる気の出る金額だと長続きする
そんな時、あるお客さんが
「あなたのやる気が出る金額を提示してください。いくらでも構いません。その値段でやりましょう」
と言ってくれた。
自分のやる気が出る金額。そんな風に考えたことは一度もなかった。
その人は続けた。
「私はあなたをプロとして高く評価しています。だから、なるべく長く一緒に仕事をしていきたいと思っています。やる気が出る金額じゃないと長続きしないでしょ。」
頭と心のモヤモヤが一気に晴れていった。
確かにそうだ。やる気が出ない値段ということは、心のどこかでその報酬に満足していないということ。一回きりならまあいいかと言い聞かせ、我慢して仕事しているということ。
そんな気持ちじゃお客さんと良い関係なんて築けない。
この時から、私は自分のやる気が出る基本給を決めた。その金額を提示して、値切ってくる人とは基本的に付き合わない。
人間心理とは面白いもので(もしくは私の性格が悪いだけかもしれないが)、たとえ100円でも値切られるとやる気が激減してしまう。逆にたった100円でも高いと、1.5倍くらい仕事を頑張ろうって思えてくる。高く評価してくれたことが嬉しくて、期待以上の成果を出したくなる。
今思えば、このお客さんは私がそーゆーモチベーションで動く人間だということをよく理解していたのかもしれない。
不安に負けて安請け負いしない
ちなみにこれは私のルールであり、大阪の商人みたいに値決めが上手な人は、わざわざこんなルールを決める必要すらない。その場で損得を計算して交渉すればいいと思う。
私は値決めが苦手だから、あらかじめ決めておいているだけ。
そして、一度決めたルールは簡単に破らない。最もダメなのは、自分に負けて安請負してしまうことだ。
自信がないと値引きしたり、実績を作りたいからと言って無料で仕事を受けてしまう時がある。でも、これは逃げだと思う。実績を作りたいなら別に無料じゃなくても作れるはず。高いかなと思ったら、値下げするのではなく、それに値する自分になるよう価値を高めていく。
仕事の質だけで評価してもらうって怖いけど、本来知識労働者であるフリーランスはそうあるべきなんだと思う。時間を切り売りするだけなら、それはフリーランスじゃなくてフリーター。
お金を考える時間と、仕事をする時間は分ける。
…それでも、やっぱり漠然とした不安が時々襲ってくる。とくに通帳の貯金残高がガクーって減ってるのを見たときはもうガクガク震えちゃうわけです。
そんな時はお金のことを心配する時間を、普段の仕事の時間とは分けて考えるようにしている。このテクニックはある会計士さんに教えてもらった。
「通帳の残高は減ります。減るもんなんです。頭の中がお金の事だけになっているのは不健康な経営です。
お金の事を考えるのは私たちと会う時だけで大丈夫。それ以外は目の前のお客さんを見る。その結果、お金が後からついてきますよ。」
全く持ってその通りである。いくらお金の心配をしたって、その時間は一銭のお金も生み出さない。
自分に合った働き方を模索し続ける
私自身はフリーになって本当に良かったと思うが、もちろん万人がなるべきとは思わない。フリーに向く人/向かない人、会社員の方が強みを発揮できる人、起業して人を引っ張るのが得意な人、様々だ。
今でこそフリーが最適と思っているが、確信が持てるようになったのはつい最近だ。いつの間にか正社員として巻き込まれたことも数回あるし、自ら正社員へ戻ろうかと悩んだ時もある。
大切なのは、自分に合った働き方を見つけること。それがまだ見つかっていないなら、見つかるまで色々試せばいい。
▼実際、正社員へ戻った時に感じたことはこちらの記事にまとめてます。
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