暗記って、どこかネガティブなイメージがありますよね。
何の脈絡もない文字や数字の羅列をひたすら覚える。辛くて単調、まるで苦行。でも英語を勉強するなら絶対避けて通れない。その強制感から、更にやる気が失せてしまう…。
こんな感じでしょうか。
私も暗記はすごく嫌いで、今でもやりたくありません。
社会人になって始めた国家資格の勉強も、暗記は出来る限り避けていました。その結果、本番3カ月前の模試はボロボロ。追い込まれてからも「こんな大量の情報覚えられるかー!(泣)」と逆切れする毎日。
そんな時、一冊の本に書かれたある言葉が私の目を覚ましてくれました。この言葉に出会ってから暗記に対する考え方が180度変わり、おかげで成績もぐんぐん伸びていきました。
そこで今日は、暗記が嫌で仕方ないという人に、暗記に対するネガティブな気持ちを少しでも楽にする考え方&テクニックをご紹介したいと思います。
この記事を読んで苦行の受験勉強を楽しい受験勉強に変えて頂ければ幸いです。
暗記を避け続けた先に待っていたもの
英語は「暗記科目」と言われます。
なので「英語が得意だ」というと、「じゃあ記憶力も良いんだね!」と、たまに言われることがあります。
もちろん「英語ができる=大量の単語を覚えるだけの記憶力が生まれつき備わっている」なんてことはありません。
冒頭でお話した通り、どちらかといえば暗記は嫌い。いかに覚えずテストで高得点を取れるかばかり考えたりする人間です。
そんな暗記嫌いの私が何を思ったか、社会人になってから国家資格を取ろうと決めてしまいました。国家資格といえば、大体難しい筆記試験があります。例にもれず、一次試験は 7科目。ほぼ初学の暗記科目でした。
一次試験は足切りなので選択問題形式、二次試験は論述形式。一次試験の目的は、そもそも知識が定着しているか試すもの。二次試験は、覚えた知識を使うことができるかを見るためのもの。
つまり一次にしろ二次にしろ、どうあがいても受験勉強の王道である暗記を避けて通ることができませんでした。
暗記が大事なことはわかっている。でもやりたくない。
そう、「やりたくない」んです。暗記って、辛くて苦しいイメージがどうしてもぬぐい切れない。本気の暗記は後回しにして、教科書に線を引いたり、問題集を解いたりして、あくまで自然に頭に入ることを期待しながら勉強を続けていました。
天の声「たかが暗記とまだ言うか」
そんな生ぬるい私の目を覚ましてくれたのが、模試でボロボロの時に偶然手に取った一冊の本でした。
その本は『勉強大全 ひとりひとりにフィットする1からの勉強法』(KADOKAWA)。
著者は東大クイズ王として知られる伊沢拓司さん。恥ずかしながら、この方が有名なクイズ王というのは、この本を手に取るまで知りませんでした。
私の目を覚ましてくれた言葉は、ずばり
「たかが暗記とまだ言うか」
です。
入試というものは、自分の中にある知識を、教科書などを見ない状態で繰り出して解答していくという作業です。つまりは、「何も見ないでいえるように覚えたこと」を使って点数を取っていくわけです。
もう、受験なんて大部分が「暗記」じゃん。
それでも「たかが暗記」と言えますか。受験の大部分をナメてかかっていては、良い成果を出せるはずもないのです。
伊沢拓司著 『勉強大全 ひとりひとりにフィットする1からの勉強法』(KADOKAWA)
クイズ王ならきっと暗記が得意だろう、と誰もが思いますよね。でもそんなことはなく、彼も暗記をめちゃめちゃ頑張ったと言っています。
東大に行くくらい地頭の良い人が暗記を頑張っているのに、自分は「自然なカタチで頭に入ればいいな♡」なんて、何てナメたことを言っていたのか!
頭をスリッパでスパコーンと殴られたような衝撃を受けました。
暗記とは解答用紙に再現すること
当時通っていた予備校の先生も、伊沢さんと同じことを何度も強調していたのを思い出しました。
「いま教室で勉強していることを、テスト本番で思い出せなければ意味がありません。覚えている=何も見ずに再現できること。当日試験会場で再現できなければ、それは覚えたつもりになっていただけ。全く無駄な努力です。」
ぐうの音も出ない正論。
確かに選択形式の問題は、正解の選択肢を選べて初めて正解になります。4択の内2択までは絞れても、最後の正解を選べなければ得点になりません。そう、選択問題に「惜しいね!」はないのです。
暗記は多くの人が苦手意識を持つ。裏を返せば、暗記さえしてしまえば、ライバルよりも一歩先に抜きんでることが出来る。やっぱり暗記が試験の肝なんだ。
ここから私の暗記に対する考え方が 180 度変わりました。
暗記をポジティブに変える方法
「暗記=何も見ないでいえること」という公式は、英会話でも同じです。
どんなに文法を理解していても、単語や用法を覚えていなければ使いこなすことが出来ません。
多くの日本人が簡単な日常会話すら苦労するのは、単純に会話表現を覚えていないから。何も見ずに再現できるようになるまで、繰り返しアウトプット練習をしていないからなのです。
「それでもやっぱり暗記は気分が乗らない」という方もいると思います。ま、人間そう簡単に変わらないもんです。
そこで今日は、暗記に対するネガティブな気持ちを少しでもポジティブに変える発想の転換と、ちょっとしたテクニックを2つご紹介したいと思います。
- 発想の転換:暗記問題の方が実はラク
- テクニック①:「覚えよう!」と気合を入れず、ただ「写す」
- テクニック②:勉強の合間の休憩時間は何もしない
発想の転換:暗記問題の方が実はラク
記憶力を求められる問題と、理解力を求められる問題。みなさんはどちらのほうが好きですか?
私は断然「理解力」を求められる問題の方が好きです。なぜなら「暗記」をする必要がないから。
でも、これが大きな勘違いということに試験直前で気づきました。
一次試験まで1カ月を切った頃。そろそろ二次試験の準備もしなければと、論述の過去問を開きました。
そこには A4一ページにわたって文章が書かれてており、一次試験で詰め込んだ知識を使って、自分で答えを組み立てるよう求められていました。
「……んんん。」
この論述問題というのは結構厄介です。もちろん模範解答はありますが、唯一の明確な答えがないからです。過去の合格者の解答を見てもみんなバラバラ。読めば読み込むほど何をどう書いていいのかわからなくなります。
不安を抱いたまま問題に突き進もうとすると、パニックを起こして余計な焦りを招きます。テストの後も「ああ書けばよかったのかな、こう書くべきだったのかな…」と不安がついて回ります。
そうすると不思議なもので、「明確な答えのない問題よりも、暗記問題をたくさん出してくれー!」という気持ちになってくるのです。
暗記問題というのは、覚えてさえいれば簡単に答えを導くことが出来る。目からウロコの逆転発想。
例えば TOEFL iBT では、単語問題が多くて 3 問くらい出ます。単語問題は正しく意味さえ覚えていれば、本文を読まなくても正解を導くことが出来ます。つまり、覚えているだけで3問分得点が確保されるのです。
「絶対にこれが正解」と思える問題は、極度の緊張で受ける試験において、貴重な安心感をもたらしてくれます。覚えていれば確実に点数を取れる。暗記問題のほうが精神衛生上、よっぽど良いのです。
テクニック①:覚えずに「写す」
最後に、心理学の見地から、少しでも暗記ラクにするテクニックを二つご紹介したいと思います。
まず一つ目は、覚える時に手を動かすこと。
小学生の頃、漢字ノートにひたすら同じ文字を書きまくって漢字を覚えませんでしたか? 英単語も同じで、私は library のスペルが覚えられず、何度も書いた記憶があります。
この「書いて覚える」という行為ですが、実は心理学的には理にかなっているらしいのです。
脳には「手の動き」に関する記憶が備わっていて、その記憶がしっかりしていれば読む能力も上がり、それが更に記憶の強化につながるそうです。
理科や算数も同様に、教科書に載っているイラストや図形を書き写すだけで、それに関する記憶や理解が深まるそうです。
「よーし覚えるぞ!」と気合を入れて単語を覚えるのは疲れてしまいますが、ただ写すだけで記憶が深まるのなら、ちょっとだけ肩の荷がおりませんか?
私はこのテクニックをライティングに活用しています。例えば “While the reading passage insists that ~” のようなちょっと長い決まり文句は、無理に覚えようとせず模範解答をただ写して終わります。
もちろん一回じゃ覚えられません。でも3~4回、1日置きくらいで取り組めば、なんとなく覚えられるようになります。
テクニック②:休憩時間は何もしない
皆さんは勉強の合間に休憩はしっかり取っていますか?
例えば単語や文法の勉強を一時間行った。次のリスニングを始める前に10分間休憩を取ろう。あなただったら何をして過ごしますか?スマホをいじる?テレビをつける?それともぼーっと窓の外を眺めますか???
この短い休憩をどう過ごすかによって、直前に学んだ単語や文法の内容をどれだけ覚えていられるかが決まるらしいのです。
単語の定着力を調べるために、グループごとに休憩中は①雑音の中でピアノの音を聞いてもらう、②ラジオを聞いて覚えてもらう、③ビデオを見てもらう、④算数の問題を解いてもらう、⑤間違い探しゲームをやってもらう、⑥ぼうっとしてもらう、という実験を行いました。
どのグループが一番テスト結果が良かったと思いますか?
はい、正解は「⑥ぼうっとしてもらう」。休憩時間になんらかの形で頭を使うだけで、その直前に覚えたことを忘れてしまうそうです。
休憩なのに頑張って復習したり予習する人、いますよね。真面目で頑張りやで、素晴らしいと思います。
でも、よく考えてみたら脳みそも体の一部。筋肉や他の臓器と一緒で、ずっと使い続けるのはよろしくないのかもしれませんね。
暗記でフル稼働した脳みそは、休憩中に是非休めてあげましょう。
※①、②のテクニックはこちらの本を参照にしました。
勉強に暗記はつきもの
英語嫌いの生徒さんからは、「英語は覚えることが多いから嫌いだ」とよく叱られます。
確かに英語の勉強は暗記の比重が大きい。単語や熟語など、覚えていないと始まりません。文法は「理解」の部分も大きいですが、理解するだけではダメ。正しい用法を覚えていないと、使いこなすことができません。
英語に限らず、数学なら公式、国語なら漢字、社会なら歴史の年号など、覚えなければ始まらない科目は他にもあります。
そう、どんな科目であっても、勉強には常に「暗記」という行為がつきまとうのです。
だから皆さん、暗記から逃げまくって試験直前に絶望するのではなく、良い意味で諦めてみてはどうでしょうか。苦労して覚えた単語や文法は、そう簡単には抜けません。きっと将来どこかで、ノートに殴り書きをして頑張って単語を覚えた自分に感謝する日が来るはずです。