- 毎日勉強時間を計測しているけど、これってどういう意味があるの?
- 苦手な分野を全て勉強していると勉強時間が大幅に必要。どこから手をつければ良いの?
- 短期間では気合いを入れてめっちゃ勉強できるけど、長期的な勉強はモチベーションが続かなくて勉強時間にムラが出てしまう…
数字は未来に目を向けるためにある
『数値化の鬼』は株式会社識学の代表、安藤広大さんの著書です。
簡単に要約すると「ものごとは数字で考え、成果を出すための行動を修正しながら続けていきましょう」ということ。
ジャンルでいうとビジネス書ですが、「数字で物事をとらえる」という考え方は、IELTSの勉強にも必須です。
確かに数値化と聞くと、「特別な知識は必要かな?」「算数や数学が苦手だけど大丈夫?」と不安になりますよね。
しかし筆者は、数字は未来に目を向けるためにあると、とてもポジティブなものとして捉えています。
数字は自分に何が足りていないのか、どういう課題があるかを「見える化」しているだけだ。そして未来の目指す姿のために、どうすればその足りていない部分を埋められるのかを考えるための手段となりうるものです(p.51)。
IELTS の場合、現状はスコアとして数字で出てくるので強制的に「見える化」されます。
現状のスコアと目標スコアにどれくらい開きがあるのか?
スコアのギャップを埋めるために何を勉強すべきか?
を考えるきっかけになるということですね。まさにスコアは、わかりやすい数値化の一例です(目標スコアに到達しない場合は地獄の数字ですが…)。
目標スコアまでの勉強時間を数字で管理する
1日に必要な勉強時間を数字で割り出す
IELTSの現状スコアと目標スコアのギャップは数字で自動的に把握できますが、日々の行動を数字で管理することも重要です。具体的には、大きな目標を「1日ごと」に分解する(p.52)という考え方です。
例えば、目標スコアとの間に 1.0(=TOEIC の300点相当)のギャップがあるとします。
スコアを 0.5上げるためには、一般的に 200〜300 時間必要だと言われているので、合計で400〜600時間の勉強時間が必要です。
目標期限まで仮に半年あるとすれば、1ヶ月あたり約 66 〜 100 時間の勉強時間が必要で、週5日勉強するとすると毎日2~3時間は必須となります。
「なるべく」とか「出来るだけ多くの時間勉強する」といった曖昧な言葉では、実際の勉強時間は少なくなることがほとんど。
心を鬼にして必要時間を割り出しましょう。
毎日の勉強時間を記録する
次に重要なのは、毎日の実際の勉強時間を記録することです。
ここでのポイントは、「失敗を失敗と認めて次につなげること(p.56)」です。
例えば、毎日3時間勉強すると計画を立てたとします。しかし、実際は2時間半しか勉強できなかった。これは失敗です。
この時に重要な姿勢は、失敗してしまった自分を責めるのではなく、なぜ2時間半しかできなかったかを分析すること。
仕事が想定通りに終わらなかったのかもしれません。もしくは帰宅後スマホに触りすぎてしまったのかもしれません。
そもそも「平日3時間毎日勉強するという計画が現実的だったのか?」と客観的に振り返り、明日から失敗しないための方法を考えることが大切です。
数値管理をしてもうまくいかない人の2つの特徴
こうした数値は厳密に管理し修正していくことが前提ですが、数値管理をうまく活かせない人の特徴を筆者は2点挙げています。
- 自分に甘い考え方を持った人
- 気合いで解決しようとする人
まず1つ目の自分に甘い考え方を持った人は、失敗を失敗と認めません。
例えば「毎週末単語テストを200語行い、90%以上の正答率を目指す」という目標を立てたとします。
実際にテストをしたら正答率は75%でした。目標は 90%だったので、75%では失敗にあたります。
しかし自分に甘い人は「7割以上正解したからまあいいか」、「今週は仕事が忙しかったから仕方ない」という評価を下してしまう。
これでは成長が止まってしまいます。ここから一歩踏み込んで、なぜ 75%しか正解できなかったのかを分析すること、つまりは自分を甘やかさず、言い訳を許さない覚悟が必要です。
2点目は、物事を気合いで解決する傾向がある人。例えば「やる気を出せばいける」「徹夜して帳尻を合わせる」というタイプの人です。
IELTS は長期戦タイプの試験のため、学校での中間テストや期末テストのような短期集中型の勉強法では太刀打ちできません。
もしこの2つに心当たりがあれば、今日からこれらの思考を変えることをオススメします。
目標達成できる人はPDCAサイクルを活用している
今までの話を整理すると以下3点に集約できます。
- 現状のIELTSスコアと、目標スコアとのギャップを数値で把握し、このギャップを埋めるための勉強方法を考える
- 勉強時間を数字で管理し、達成できなかった場合はなぜ達成できなかったのかを考える
- 勉強目標を達成できなかった場合は、正直に失敗と認める(自分を甘やかさない)
こうした考え方は、多くの方がすでに仕事で実践されているかもしれません。
これは「考え方の型」と呼ばれるものの一種で、冒頭お伝えした「PDCAサイクル」と呼ばれます。昔から使われている古典的なフレームワークの一つです。
このPDCAサイクルを愚直に回すことが目標達成への近道です。
頭文字 | 意味 | 例 |
P(プラン)計画 | 数値化された目標 | 100ページの問題集を1周解き終わる |
D(ドゥ)行動 | 計画を基にした具体的なプロセスや行動 | 問題集を1日10ページずつ解き進める |
C(チェック)評価 | 自らによる振り返り | 1日の終わりに、進んだページ数を確認する |
A(アクション)改善 | 評価を基にした反省と次の改善点 | 明日はどうやって10ページ解き進めるか決める |
表1.英語学習におけるPDCAサイクル(p.79を参考に作成)
PDCAの中で、Dが一番大事
結論から申し上げると、筆者は「D(ドゥ):行動」が一番重要だと主張しています。具体的には、「何回やったのか」「1日に何時間できたのか」という量を表す数字です(p.83)。
私たち人間は「P(プラン):計画」を立てる時がもっともテンションが上がるそうです。例えば旅行の計画を立てたり、お金の使い道を考えたり、資格取得のための計画を立てることですね。
しかし「計画は、実際に行動が伴って初めて意味を持つ(p.81)」のであり、行動量にフォーカスしなければいつまで経っても実現しません。
また行動する際は、それが成果につながる行動なのかを見極める必要があります。
例えば、毎週200個の単語を復習するとし、正答率を90%以上にするという目標を掲げます。まず、40語ずつ5日に分けて覚えるやり方を試してみました。しかしこの方法では75%しか正答できなかった。
そのため暗記方法を変え、1日200語を一気に覚え、5日間同じ行動を繰り返すパターンを試してみました。その結果、正答率が90%を超えたとします。
この場合、単語の覚え方は一気に200語覚える方法が成果につながる行動であると結論づけられます。
一つ一つの勉強内容は、このように成果に繋がる行動でなければなりません。
筆者はそのような成果に繋がる行動を「変数」と呼び、さらにこの変数を「変えられること」と「変えられないこと」に分けています。
重要なのは
「変えられること」を変えようと努力し、「変えられないこと」は早々に見切りをつけることです(p.165)。
IELTSでいえば、変えられることは自分の行動で、変えられないことはIELTSの評価基準や、試験内容への不満(なんでこんなにパラフレーズさすねん!)かもしれません。
IELTSで成果を上げるためには、どのように勉強すれば良いかという計画の部分は最小限にし、とにかく勉強量を増やすこと。
そして勉強量を増やす中で、成果に繋がる勉強に集中すること。これが大事なポイントです。
IELTS学習における金言
ここからは、数値管理以外にも IELTS の勉強に役立つアドバイスを紹介したいと思います。
言われた通りにやってみる
IELTSを勉強する際に「この勉強法って本当に意味があるの?」と思うことはありませんか。
筆者は、『疑問に思うことを一つ一つ確かめている人より、与えられたことを素直にやる人の方が仕事は上達します。まずは体に覚えさせて、成長した後にそれを疑ってみる(p.94)』と述べています。
なぜなら、根本的な「理解」や「腹落ち」は遅れてやってくるものだからです。
これを IELTS の勉強に置き換えてみると、IELTSを熟知しているプロが言うことは、まずは「言われた通りにやってみる」。私の個人的な経験(失敗)からも、素直さはとても大事な心構えだと思います。
他人の成功論はすべて「個人的な体験談」
IELTSの勉強方法をネットで調べていると、多くの個人の成功談がでてきます。
しかし筆者は、他人が書いた『成功体験という答え」は『「変数」ではなく、「仮説」だから(p.191)』と言っています。
つまり、ある人の成功体験が、そのまま自分にも当てはまるとは限らないということです。なぜなら、今までの英語の勉強歴や性格などによって、勝ちパターンは異なるから。
上記の通り「言われた通りにやってみる」素直さは重要ですが、ここで大事なのは、そのやり方を実施して成果が上がったかどうかは自分で検証する姿勢です。
例えば単語の覚え方を、見るだけで覚えられると主張する人がいたとします。しかし一方では、五感をフル活用して声に出しながら書くことが必要だと主張する人もいます。
どちらが正しいというわけではなく、どちらも試してみて自分に合った方法を見つけていくという姿勢を持ちましょう。
常に目的は何かを意識しながら勉強する
行動量を増やすことは大事ですが、それが目的化してしまってはいけません。
筆者は『「手段」と「目的」が入れ替わってしまう危険性がある(p.97)』と指摘します。
例えば、自分はスピーキングの「Fluency」の項目を鍛えるために瞬間英作文を勉強しようと決めた。
しかし、毎日勉強をしていると、瞬間英作文を1時間やることが目的となり、本来の目的である「Fluency」の項目を鍛えるということを忘れてしまっていた、という感じです。
少し大きな話をすると、IELTSのスコアアップは、人生の目標達成のための手段でしかありません。
IELTSの勉強は短期的には目標スコアを取るためですが、その先には留学先で満足できる学びを得られるためです。
さらにその先には、自分が思い描くキャリアに繋がってきます。IELTSを勉強することは、人生の目標に繋がっていることを忘れずに勉強に取り組むと、モチベーションも変わってくると思います。
やらないことを決めることが大事
勉強をしていると、自分の足りない部分が多く見えてきてしまって、あれもこれもやらないとという気持ちになるかもしれません。
筆者は変数は放っておくと増えるので、変数を増やさないために大事なことは「やらないことを先に決める(P.207)」、「重要なことから着手する(P.233)」と述べています。
IELTS の勉強は4技能(R、L、W、S)あり、単語も文法も実施する必要があります。しかし、これらを同時に全て行うのではなく、今は「○○」に集中するという意識が必要です。例えば○○には文法が入る人もいるし、リーディングの人もいるでしょう。
IELTSを攻略するには順番があり、そこを間違えてしまうと膨大な時間をロスしてしまいます。
それぞれ今までの積み上げも違うため、何から手をつける必要があるか、そこを間違えないように優先順位を意識して勉強していきましょう。
長期的な目線が必要
数値で考えるクセづけは、最初は難しいかもしれません。
しかし、筆者はPDCAサイクルを愚直に回し、毎日自分に打ち克つことで大きな成果に結びつくと述べています。筆者の会社は四半期に一回、MVP(Most Valuable Player)を選び、表彰される方は揃って以下の言葉を口にするそうです。
UtoGo Academyが大切にしている考え方
目の前の人が成果が出なくて落ち込んでいるとき、つい「数字」の話を横に置いて優しい言葉だけをかけてしまうのが人間でしょう。ただ、数値化の鬼として振る舞えたから、彼らは成長することができた。短期的には嫌われたとしても、長期的に見ると、後から遅れて大きな感謝を抱くようになるのです。(p.286)