英語の総合力を上げる『音読の力』なぜ効果的?具体的なやり方は?

英語を伸ばすには音読が大事と言うけれど、音読ってどうやってやるの?

英語の総合力を伸ばすのに欠かせない音読。特に「英文を読むのが遅い」、「複雑な文章になると読めない」、「長いリスニングについていけない」という人にはとても効果的な勉強法です。

いっぽう、

  • 音読の具体的なやり方がわからない
  • 本当に効果があるのか疑わしい
  • 音読なんて恥ずかしくて出来ない

という人もいると思います。

Ringo
ハッキリ言って音読はめんどくさいです。恥ずかしいし、自分のへたくそな英語なんて聞きたくもない…。

でも、音読をすれば確実に英語の4技能が上がります。この記事を読んで、さっそく音読練習を取り入れてみてください。

音読とシャドーイングの違い

音読とは、字の通り「声に出して読む」こと。

声に出して勉強する方法といえば、似たものにシャドーイングがあります。リスニング力を上げるのに欠かせない練習法です。

音読との違いは次のとおり。

シャドーイング から聞こえてきた音声を認識し、声に出して発声する
音読 で見た文を頭の中で音声に変換し、声に出して発声する

大きな違いは、情報の取り入れ方、つまりインプットの仕方です。

シャドーイングは「耳」から英文を聞き取りますが、音読は「目」から入った英文を、頭や心の中で音声に変換して発声します。

正しい発音を思い出し、どのような抑揚になるか、どこでポーズ(区切り)が入るか、自分の力で判断できないと自然に読むことが出来ません。

つまり音読がスラスラ出来るということは、「単語を正しく発音でき、意味の塊を的確に捉えられ、英語の語順で前から理解することが出来る」ということになります。音読が得意な人は、自然と読解力も向上します。

なぜ音読が大事なのか

ではなぜ、音読が英文の読解力を高めるのでしょうか。

実は、音読の効果は何も英語に限ったことではありません。元外交官で作家の佐藤優氏は、著書『国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義』(NHK出版新書)で以下のように述べています。

読解力の基本は「音読」から

筆者は、大学での講義や社会人を対象とした講座では、課題図書の「読み合わせ」を行います。受講生たちに、順番に音読をしてもらうわけです。その目的は「読み飛ばし」を防ぐことにある。黙読やななめ読みでは、わからない言葉があるとつい読み飛ばしをしてしまいます。その結果、文章構造を捉えそこね たり、大事な概念やキーワードを理解できずに読み進めたりするケースが少なくありません。

佐藤 優『国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義』(NHK出版)

効果① 読み飛ばしを防いで、読めないことを自覚する

佐藤氏の言う通り、音読は「読み飛ばし防止」の効果があります。

黙読だと読めているフリが可能です。私も授業で生徒さんに音読してもらうことがあるのですが、音読がスラスラ出来るか出来ないかで、その人の大体の英語力がわかります。

TOEFL iBT 70点、IELTS 6.0 の方でも、スラスラ英文を読むことは難しく、単語の読み落としや読み間違いをしています。

読み落としや読み間違いは、声に出して読まないと、自力で気づくのは難しいですよね。しかし、この「自分で気づく」というのがとても大事。

意味はわかるけど発音がわからないのか。発音も意味も両方わからないのか。その単語がわからないせいで、文章全体が理解できないのか。つっかかるのは、構文を知らないからか。あるいは文法を理解していないからか。

発音できない単語を使いこなすことは出来ません。速読のつもりがただの「拾い読み」なら、いつまでたっても正解率は上がりません。

声に出すことで様々な課題に気づくことが出来ます。まずは自分が「読めていない」ことを認識することが大事です。

声に出して、読めない単語や構文に印をつけよう

効果② 文章理解のスピードが上がる

音読の二つ目の効果は、情報処理の高速化です。

文章理解には情報処理の高速化が必須。目だろうと耳だろうと、入ってくる情報を素早く処理しなければ文章も読めないですし、当然リスニングにもついていけません。

英語の文章を理解する時、人間の頭の中では次のようなことが起こるそうです。

1.眼球による文字知覚

2.その文字の塊を長期記憶内のスペリング情報の中から検索・照合

3.それを頭の中で音読

4.その単語の意味を想起

(引用:鈴木寿一、門田修平著『英語音読指導ハンドブック―フォニックスからシャドーイングまで』(大修館書店)

これら一連のプロセスが素早く行われない場合、文字の知覚や検索・照合など「枝葉」の処理作業に注意力が使われてしまいます。

その結果、木はおろか全体の「森」を見る余裕がなくなり、文章を正しく理解することが出来なくなってしまいます。

つまり、上記①~④の処理スピードをいかに速くできるかが、文章理解のスピードと正確さ両方を上げる鍵になるということです。

面白いことに、人は黙読する時、頭の中では音声に変換して読んでいるという事実です。声にこそ出てないけれど、音読抜きに人は文章を理解することが出来ないんですね。

音読を重ねることで、スペリングと発音の結びつきが強化され、学んだ単語や文法などの知識を自由に使いこなせる(記憶から素早く取り出して使いこなせる)ようになります。

音読は情報処理スピードを上げるのに、まさにうってつけの練習ですね。

黙読でさえ、頭の中では音読をして、情報を処理している

効果③ 長期記憶を助ける

学んだ単語や文法などの知識を自由に使いこなせるためには、前提としてその知識が記憶に定着している必要があります。

人の記憶には短期記憶長期記憶があります。

単語の意味を思い出したり、文法を自由自在に使うためには、長期記憶力を高める必要があります。

「情報」は、目、耳、鼻などの感覚器官を通じて私たちの脳に伝わります。それは短期記憶として一旦保存されます。その後脳内で正しく情報処理されたものは「知識」に変わり、長期記憶に保存されます。

この長期記憶の貯蔵に関連するのが、側頭連合野という、聴覚(耳)や視覚(目)からの感覚情報を認識・記憶したりする働きをする部分らしいのです。

つまり長期記憶を助けるには、目と耳を両方使ったほうが効率的ということ。

もちろん声に出さなくても記憶は出来ますが、それはあまりに視覚情報に頼りすぎかなーと。

逆に言えば、耳の力を信頼しなさすぎている。

こどもは、まず耳から言葉を覚えますよね。そして次に口を使って言葉を発します。「あ」と発声したければ、何も考えずに自然と筋肉を動かして「あ」と発声することが出来ます。何かのマニュアルを「見て」言葉を覚えるわけではありません。

私たちの言語能力は聴覚や体を動かす運動感覚とも密接に関わっているのです。目以外に、もっと耳や口の力を信じてあげてもいいと思うのです。

五感をフル活用して単語も文法も覚えやすく

ちなみに自分が「耳から学ぶ派」か、「目から学ぶ派」か知りたい方はこちらの記事もどうぞ。

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音読の具体的なやり方

音読には色々な方法があります。ここではスタンダードな方法を紹介します。

音読のやり方

  ステップ 内容
教材を用意する CDなど音源がついているもので、自分のリーディングレベルより少し簡単な教材を選ぶのがおススメ。TOEFLやIELTSならリスニング問題を使ってもいいし、音読専用の市販本を買ってもOK。
リスニング まずはスクリプトを見ずにリスニングする。
精読 まずは日本語で意味を理解する。語句のチェック、英文構造、品詞の理解などを行う。この時、文にスラッシュを入れてチャンク(意味の最小単位のかたまり)を作る。スラッシュを入れる目安は接続詞、前置詞、関係詞、カンマ挿入句の前後など。かならず日本語で意味を理解してから音読するのがポイント。
チャンクごとにリピート スラッシュを入れたチャンクごとに区切って、リスニング。CDを一旦止めて、発声する。この時はまだ音声に注意がいっていてもOK。CDを真似る時は発音だけじゃなく、リズム、イントネーション、ストレス、ポーズも真似るように。リズムは文型や構文の理解を促してくれる。イントネーションも真似して、音声変化(つながったり、音が落ちたり)を体で覚えるように。
意味を思い浮かべながらリピート チャンクごとに、意味を思い浮かべながらリピートする。今後は音の発声だけでなく、意味にも注意を向ける
通読を3回 自然なスピードで音読(通読)する。初めはとにかく発音できること、スムーズに読めることにのみ意識が向いている。徐々に意味(※「日本語訳」ではない!)もイメージしながら音読する。

更に上を目指す人は、スクリプトを見ないで暗唱したり、シャドーイングを取り入れるのも効果的です。

ぶつぶつ言える空間の確保がマスト

音読は英語の総合力を上げるには最強の練習法です。しかも簡単でお金もかかりません。いつもの勉強の仕方に、ちょっと音声をプラスするだけ。

唯一デメリットを上げるなら、音読できる場所の確保が難しいこと。誰の目も気にせず一人でぶつぶつ言える空間って、結構少ないんです。家族に聞かれるのも恥ずかしいですしね。

しかし音読の効果はやはりすごいらしく、脳科学者の茂木さんも勉強に音読を取り入れていたそうです。なりふり構わず大声で体を動かして行っていたので、誰にも見られてはいけないという意味を込めて、「鶴の恩返し勉強法」と名付けていたらしいです。

みなさんも鶴の恩返し勉強法を見習って、ぜひ音読に挑戦してみてはいかがでしょうか。

▼参考文献

英語の総合力を上げる音読の力
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