「今度こそはいける!」と思って受けたのに、テーマで撃沈する……ある程度英語力がついてきた頃に、このような悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
質問者の仰る通り、スコアがブレる原因の一つに単語力があります。
英語を勉強するうえで単語が重要なのは、誰もが知るところ。その重要性は英語力が上がるほど増していきます。というより、上級者になればなるほど単語勝負の世界に突入していくのです。
そうですよね……。
- 単語の重要性はわかっているけど、辛い暗記はしたくない
- 単語を覚える効率的・効果的な勉強法を知りたい
- 単語帳は作った方がいい? それとも単語本を覚えたほうがいい?
- 英英辞典や語源辞典を使って覚えるって本当に効果的?
そんな疑問をお持ちの方に、IELTSを攻略するために必要な単語数や、レベル別の勉強方法、単語学習を続けるコツについてお話します。
実際、筆者も単語習得には苦しんでいます。この記事を読んだみなさんが、少しでも単語勉強に前向きに取り組めることを願っています!
「単語を覚える」とは
回りくどいですが「単語を覚える」の定義から確認していきたいと思います。
単語を覚えるとはどーゆーことか。もちろん「単語を覚える=和訳する」ではありません。
単語を覚えるときは
- 意味(※しつこいけれど、和訳じゃなくて意味です)
- 発音
- 品詞
- 活用(例:write – wrote – written)
など、単語が持つ意味以外にも覚えることがいくつかあります。
加えて、熟語や派生(例:literate(読み書き出来る), literacy(読み書き能力), literature(文学))なども覚えられると理想的です。
『英語が出来る人はどう使う?電子辞書の使い方【基本編】』でも書きましたが、いわゆる英語ができる人たちは、単語を調べる時に上の4項目は必ず覚えています。
辞書を引いたら例文や解説をチェックして、熟語や派生語も積極的に覚えようとします。
同記事の【応用編】でお伝えしましたが、単語を調べるときに英英辞典が推奨されるのは、英単語そのものの意味を深く理解できるから。
和訳を覚えてしまうと、その文にしか当てはまらない個別対応しかできませんが、単語そのものが持つコア・ミーニングを理解していれば、様々な文脈で意味を推測することが出来ます。
また語源を知っていると、関連した単語を効率的に覚えられるようになります。
例えば「ped」の語源は「足」です。それを知っていれば、pedal(ペダル)、pedestrian(歩行者)という基本単語、さらには centipede(ムカデ)のようなどこから覚えていいかわからない難しい単語も、覚えられるようになります。
ただ注意したいのは、英英辞典や語源辞典は中~上級者向けの話。
TOEFL iBT なら75点以上、IELTS なら6.0以上の人が、それぞれ100点以上、バンドスコア 7.0 以上を目指す時に取り組むべき方法です。
もちろん英英辞典や語源辞典を使うのは素晴らしい姿勢です。が、単語学習の最大の敵は途中でやめてしまうこと。初級レベルの方は、無理せず英和辞典を使い、基本的な単語をマスターしましょう。
覚えるべき単語数の目安
単語が大事と言いますが、一体どれくらい単語を覚えなければいけないのでしょうか。
文部科学省の『中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説【外国語編】』によると、今後は小学校で 600 ~ 700 語程度、中学校で 1,600 ~ 1,800 語程度、高等学校で 1,800 ~ 2,500 語程度、合計 4,000 ~ 5,000 語ほど学習するのが目安らしいです。
つまり小学校で英語を習っていない世代でも、学習した単語をちゃんと覚えていれば、基礎単語力は 3,000 語以上あるはずということですね。
TOEFL や IELTS を受ける方、また留学を目指している方であれば、これに加えて基本単語 1,000 語、合計 6,000 語は最低限知っていたいところです。
この「基本単語 1,000 語」は、いわゆるTOEFL や IELTS 単語本の最初に載っている単語 1,000 個です。
私たちは『』(旺文社)を使っていますが、基本語が約 1,000 個掲載されています。IELTS ならバンドスコア 5.0 に到達するレベルです。
更に上のスコアを目指すならば、8,000~10,000 語は必要になってくるでしょう。上の本も 3,500 語と謳っていますので、学校で習う 5,000 語+約 3,500 語= 8,500 語となり、計算も合いますね。
残りの “7%” を侮るなかれ
ちなみに『英単語学習の科学』という、ものすごい専門的な研究をされている中田先生の著書によると、
英語では最も頻度が高い単語 1,000 語で、あらゆるテキストの約 80% をカバーしています。最も頻度が高い 2,000 語では約 90%、3,000 語では約 93%と、カバー率は徐々に増えていきます。
しかし、これ以降は苦労して単語を学んだとしても、カバー率はごくわずかしか増えません。最も頻度が高い 4,000 語では約 95%、5,000 語では 96%、6,000 語では 97%というように、1000 語を学んでもカバー率は約1%ずつしか増えません。
※筆者太字
中田達也著(2019)『英単語学習の科学』研究社
とのこと。
「なんだ、じゃあ 3,000 語でも結構読めるじゃん!」と感じてしまいませんか? しかもそれ以降のカバー率は 1,000語で1%だなんて……。
でも、よく考えてみてください。
3,000 語で 93%読めるということは、残りの7%は読めていない、ということです。
簡単にいえば、ワード数 100 個 の文章のうち、わからない単語が7個ある。200 個に増えれば、14 個もわからない単語がある、ということになります。
これって結構リスキーじゃないですか???
IELTS のリーディングなんて、1パッセージ 700 語以上あります。7%× 700 = 49 個もわからない単語が出てくるわけです。
49個も知らない単語があれば、簡単な問題は解けても、ちょっと難しい問題は間違えてしまう可能性が高くなる。
ハイスコアを目指すのであれば、例え非効率であっても、4,000…5,000…6,000 と、1%を伸ばす努力を惜しんではいけないのです。
単語の覚え方
では一体、10,000個もの単語をどうやって覚えたらいいのか。
単語の学習方法は大きく二つあります。
一つは単語を意図的に覚えるやり方。もう一つは文脈から自然に覚えるやり方です。
前者が、おなじみの単語帳や単語本を使って暗記していくイメージで、後者が、読書や会話をしながら単語の意味を推察して覚えちゃった、という感じですね。
よく「単語帳で暗記した方が良いですか?」とか「文脈から推測すべきですか」など、単語帳派 vs 文脈派のような質問をされます。
しかし、どちらか一方が効果的という話ではなく「レベルに合わせて使い分ける」というのが正直な回答。結局、両方必要なんです。
先ほどの中田先生の本によると、文脈から自然に意味が推測できるには、テキストの 95 ~ 98% が既知の単語で書かれている必要があります。当然ですが、知らない単語が多ければ、文脈から推測なんて出来ないわけですね。
また一つの単語を覚えるには、その単語に12回ほど触れる必要があるそうです。
TOEFL や IELTS の上級レベルの単語に、普段の会話や本から自然に12回ほど接するのは非現実的。ですから、このような上級レベルの単語を習得するには、意図的に覚える練習も取り入れていかなければならないのです。
超初級~初級者の勉強法
最も頻度の高くテキストの 93%を占める 3,000 語までの習得を目指す超初級者の方は、リーディングやリスニングの問題を大量にこなしていれば、比較的自然と単語が覚えられると思います。
特に function word(ファンクション・ワード:機能語。代名詞や接続詞など)を中心に、文法と一緒に覚えると効率的です。使用するテキストは中学~高校レベルのもので大丈夫。
基本単語 6,000 語までの習得を目指す初級者の方は、単語帳や単語本を使った暗記方式も取り入れていくと効果的です。知っている単語が増えてきたら、文脈から推測する方法も積極的に試してみてください。
IELTS や TOEFL のリーディングには、必ず単語の意味を推測させる問題が出ます。試験対策にもなりますし、留学生活が始まりいちいち辞書で調べる時間がないときに、必ず役に立つでしょう。
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中~上級者の勉強法
中~上級者は、ある程度文脈から推測する力がすでについています。
だからこそ注意したいのは、推測だけに頼って単語を覚える努力をやめてしまうこと。
これ、本当に陥りがちなんですよね。私自身、単語力がおそらく7,000語くらいに達したときから単語の勉強が億劫になってきました。なんとなくノリで読めるからいいじゃん、と。
でも、ご存知の通り TOEFL や IELTS はノリで正解できるほどあまくありません。大学の授業についていくのも大変です。
冒頭でお伝えしたように、上級者ほど単語力がモノを言う。英文が読めるようになってきた時こそ気のゆるみを戒めて、意識的に単語を覚えなければなりません。
単語の勉強を毎日続けるコツ
私の場合は、オリジナルの単語帳と単語本を中心に勉強しています。単語本は先ほど上で紹介した『』です。
単語帳は無印良品の1個 60円くらいの単語カードを使っています。プラスチックのカバーがしっかりしていて、バッグに雑に入れてもくしゃくしゃにならないのがお気に入りです。
作り方ですが、リーディングやリスニングの問題集を解いて、わからなかった単語だけ表に英語、裏に日本語の意味を書きます。発音が難しいものは発音記号も裏に足します。
ポイントはごちゃごちゃ書かないこと。
複数の意味を持つ単語でも、その英文の文脈に沿った意味しか書きません。品詞とか活用を欲張って書いてしまうとなかなか覚えられないし、何より単語帳を作ること自体が大変になってしまう。そうすると結局勉強が続かなくなってしまいます。
単語学習のような辛い(?)作業は、いかに簡単に続けられるか、仕組みづくりが命。「英語の勉強を始める時は必ずオリジナル単語帳の復習から。20 分だけやる。」というルールも設けています。
どうしてもモチベーションが下がって単語を勉強したくない! という日は、面白い英語表現が載っているCDを聞き流して、勉強したことにしています。
単語本は前から順に覚えるの苦手なので、抜き打ちテスト的に使う。実力チェックのツールと割り切って、苦痛すぎることは敢えて課さない。
モチベーションをマイナスからプラスに上げるのは大変だから、最初からモチベーションに頼らない仕組みを作ってしまう。
こんな風に、なるべく楽に、なるべくシンプルなルールをつくることが、勉強を毎日続けるコツかと思います。