先日、留学を目前に控えた大学生から「留学する前に、何を準備しておけばいいですか?」と質問されました。
「日本から何を持って行くべきかという意味で?」と聞き返すと、どうやらそうではなさそうです。
彼らの話をよく聞いてみると、日本にいるうちに出来るだけ準備をして、留学に対する漠然とした不安を解消したいと思っていることがわかりました。
私も16歳で初めてアメリカに留学した時は、不安と緊張で押しつぶされそうでした。出発当日。さっきまで友達や家族に囲まれてわいわい見送りをしてもらっていたのに、手荷物検査を抜けると急に一人ぼっち。不安と緊張に加えて、孤独がのしかかります。
当時、海外は今よりずっと遠かった。ネットもスマホもない。そう簡単には連絡できません。
「親を説得して、大金をはたいてもらって留学が実現した。友達にも盛大に送迎会を開いてもらった。どんなに辛くても、途中でノコノコと帰るわけにはいかない。絶対に1年間、頑張るんだ。でも、本当に頑張れるのだろうか……。」
少しでも気が緩むと、すぐに不安に襲われてしまう。飛行機の窓からのぞく成田空港がどんどん小さくなるのを見て、「もう引き返せないぞ」と涙ながらに覚悟を決めたのを覚えています。
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不安を生み出す根底にあるもの
留学に対する不安の正体って一体何なのでしょうか。
- 英語が通じるかな?
- 授業についていけるかな?
- 友達は出来るかな?
- ホストファミリーとうまくやれるかな?
- ご飯は合うかな?
- 病気にならないかな?
……例を挙げたらきりがありませんね。
このすべてに対応できるだけの事前準備なんて、ほとんど不可能です。しかも問題というのは、たいてい想定「外」の事柄に関して起こります。
結局これらの不安を生み出す根底には、「全部うまくやろう」とする真面目さと「自分にうまく出来るのかな」と疑う自信のなさがあるのかな、と思います。
頭の回転が速く先読みが得意な人も、不安を生み出しやすい気がします。
次々襲ってくる不安たち
不安を生み出すメカニズムは、なにも留学に限ったことではありません。
ただ留学は、住み慣れた街で、言葉も通じて、家族も友達も近くにいる日本で新しいことに挑戦する場合とは、状況が違います。
いつもだったら前向きに明るく取り組めることでも、留学先では急に弱気になったり、ついネガティブ思考に陥ってしまうこともあります。
日本では社交的だった私も、留学先ではかなり「暗いやつ」だったと思います。英語が話せないこと、学校でほぼ唯一のアジア人であったこと、日本人なのに自分が全然 “Cool Japan”じゃないことなどが無意識の内に引け目となって、どんどん自分を卑下するようになりました。
「友達を作るのって、どうやるんだっけ……。」
廊下を歩きながら急に涙が止まらなくなって、トイレに駆け込んだこともあります。
こんな調子で後10カ月も過ごせるのか。そんな悩みや感情を抱いたのは初めての経験でした。
とまあ、そんな感じで留学って落ち込みやすいです。留学中、特に不安や不満を抱えやすいのは、
- 自分を追い込んでしまう
- 日本のことを引きずる
という状況に陥っている時。特に①は、日本では優等生だった人、自立心の強い人、完璧主義の人が陥りやすいかもしれませんね。何でも出来た人が「何にもできない自分」を受け入れることが出来ないのです。
②の場合は不安が不満に転嫁しやすいので、注意が必要です。
例えば「行先にちゃんと到着できるかな」という不安が「バスの路線図がわからない!時間通りにバスが来ない!」という焦りにつながり「東京ならどこでも電車で行けるのに、ロスは公共交通機関が全然発達していない。なんて不便なんだ!」と不満につながってしまいます。
不安を招く思考の癖に気づく
では、一体どうやったらこのモヤモヤとした不安を解消することが出来るのでしょうか。
さきほど挙げた「①自分を追い込んでしまう」「②日本のことを引きずる」は両方とも思考の癖です。
「上手くやろなきゃ」「完璧にしたい」とついつい思ってしまう、自分のこだわり。こだわりを持つのは素晴らしいことですが、時に自分を縛り付けることにもなります。
普通に考えて「すべてを上手くやる」って不可能じゃないですか??? そもそも「留学を上手くやる」って、どういうことなんでしょう。英語が流ちょうに話せるようになる? 友達がたくさん出来る? ホストファミリーと仲良くなる????
人によって留学の目的は違うはず。だからいわゆる一般的な“留学生の成功例”みたいな像は気にしなくていいと思うんです。
「英語も思ったより伸びなかったし、友達も多くは出来なかった。でも、おかげでいつも SNS をチェックしなくて済んだし、一人で静かに過ごす時間も悪くなかったな。ペラペラ話せるほどにはならなかったけど、世界を一人旅できるくらいの英会話力はついたな。」
完璧主義の自分を捨てて、うまくやれない自分を受け入れる。友達が少ない自分をかわいいなと思う。こんな感じで、自分の新しい一面を発見できるのが留学の面白さでもあります。
日本のことを引きずってしまうのも、日本にこだわりすぎているからかもしれません。日本と留学先を比較すること自体は悪くないのですが、こだわりが強すぎると日本の良いところばかりが目に付いて、留学先のアラ捜しばかりすることになりかねない。
日本の暮らしが快適なのは当たり前。だって生まれ育った故郷ですからね。でもその快適な環境から抜け出して、新しいことに挑戦しようと決めたのはあなた自身のはず。新しい土地への不安はあるだろうけれど、準備のし過ぎは変化や失敗を楽しむ心の余裕を奪ってしまうかもしれません。
具体的な不安解消策3つ
不安なんて、いくら準備しても100%は解消できない。だったら逆に「準備なんて一切しないぞ!」くらいの気持ちでも良いんじゃないでしょうか。
想定外のことが起きても自分ならやれるという自信を持つ。自信とは「自分を信じる」ことです。何の根拠がなくても、自分なら出来るという思いこみも時には必要かなと思います。
ちなみに私が辛い時期を乗り超えるために試したこと・結果として良かったことは次の3つ。
- 日記をつける
- 留学仲間を持つ
- 楽観主義を心がける
日記
一つ目の日記は、単純にストレスのはけ口になっていました。自分の考えていることって、一旦言葉に出してみないと意外とわからないもの。何が辛かったとか、悔しかったとか、書いている内に心のモヤモヤが落ち着いていきます。日記の最初のページに留学の目的なんかを書いて、時々見直すのもお勧めです。
留学仲間
留学仲間は、本当に大切な存在です。ライバルでも良いです。遠く離れていても良いです。とにかく同じ境遇で他にも頑張っている人がいると思い出すだけで、自分も頑張ろうという気持ちになれました。上の「自信とは自分を信じること」という言葉も、辛くて心が折れそうになっていた私に、留学仲間が送ってくれた大切な言葉です。
楽観主義
最後の楽観主義ですが、合言葉は「死ぬわけじゃないし」。何かものすごく苦しいことがあっても、最後は「ま、死ぬわけじゃないしな」と口に出して言うと、不思議なほど不安が解消されます。ちなみに私の友人は真逆の「ま、どうせ最後は死んじゃうし」と言うと心が落ち着くそうです。ぜひどちらか試してみてください。
その他
日本にいる間に趣味を作っておくのもお勧めです。プレイ人口が多く、道具も少なくて済むスポーツは世界中で友達が作れます。一人で完結系だと、プール、ヨガ、料理あたりが人気。中にはミシンや楽器を日本から持ち込んでいる強者もいました。
それでも辛いときは帰国する
最後にこれだけは伝えておきたいのですが、どうしても辛い時は帰国するのも全然ありだと思います。
何のために留学するかと言えば、まぎれもなくあなた自身が幸せになるためです。なんかちょっと宗教チックな感じですが、本当にそう思うのです。
留学は誰かと競うわけでも、見栄を張るためでも、意地を通すためのものでもありません。頑張ること、成長を求めることも大事ですが、そのために心身のバランスを崩しては意味がありません。辛いとき、悲しいときは「あ、自分は今こんなに悲しいんだな」と、その感情をまずは認めてみてくださいね。それだけでも少しは楽になれると思います。
▼アメリカの大学に留学する人向け
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