大学の授業についていけるのか。
これから留学する人にとって、最大の心配事ですよね。特にリスニングに自信がないうちは「こんな英語力で授業が理解できるかな…」と不安に思う人もいると思います。
私も留学した当初、最初の3か月間はほとんど授業についていけませんでした。1時間の授業で聞き取れる単語はほんの2~3語…。先生の言う冗談でクラスメイトが全員笑っている中、自分だけ何が起きているかわからず取り残される孤独感。本当に辛くて仕方ありませんでした。
当時はインターネットがない時代。当然 Google 大先生はおりません。授業についていくには、わからないことを辞書や本で地道に調べなければなりません。これがまたものすごく大変。何度徹夜したかわかりません。
それに比べ今は外国にいても、日本語で何でも調べられる時代です。言語のハンデがある留学生にとっては随分心強い時代になったものだなーと思います。
だからといってノー準備で留学するより、日本で準備できることはしていきたいという人も多いと思います。
本記事では、アメリカの大学の基本的な授業スタイルについて簡単に紹介いたします。筆者の失敗談も交えて、授業の乗り切り方や、日本にいる今からでも出来る準備事項についてお伝えします。
アメリカだけでなく、欧米系の大学に留学予定の方もきっと参考になるはずです。この記事を参考に、留学までの時間を充実したものにしましょう!
アメリカの授業スタイル
アメリカの授業スタイルの特徴は次の3つです。
- 予習が中心
- 参加型の授業
- エッセイの比重が大きい
上の3つは特に日本の授業スタイルと大きく違うところで、多くの日本人留学生が壁にぶつかるところでもあります。
予習が中心
みなさんは「アメリカの大学は入学するのは簡単だけど、卒業するのは大変だ」という話を聞いたことはないでしょうか。
この話は事実 “YES” だと思います。英語がネイティブのアメリカ人であっても授業についていくのは大変です。つまり大学の授業についていくのに必要なものは、純粋に「英語力」だけではないということですね。
では、一体何がそれほど大変なのでしょうか。
その答えの一つが大量のリーディング・アサイメントです。
アメリカの授業では、たいていどのクラスも大量のリーディングが課されます。2~3日で数十ページ読んで来い!なんて宿題が出るのはざら。アメリカの教科書は、1冊がタウンページほどの分厚さです。文系科目では一学期に2~3冊課題図書が出たりします。
基本的に、学生は予習(宿題)として出したリーディング教材を読んできたことを前提として授業が進んでいきます。予習箇所が読み切れていないと、全く授業についていけません。
周りがどんどん発言している中、自分だけ取り残されている孤立感と絶望感……。
「早く授業が理解できるようになりたい!」
図書館の閉館時刻まで残り、辞書を片手にひたすら教科書と格闘していた記憶があります。
参加型の授業
肝心の授業そのものですが、先生たちは一方通行の講義をしません。その代わりにディスカッション形式を取ります。
というのも、一方通行型で説明するような基本内容は、予習のリーディングでカバーできているはずだから。「読んで吸収できる知識ならわざわざ授業で解説する必要ないよね」という理屈です。
なので授業は、
「この本の著者は〇〇と主張していたけれど、君たちはどう思う?意見を聞かせてくれ」
という感じで始まり、先生がガンガン問いを投げてくる。
それに対して学生も勝手にしゃべりだします。手を挙げて指されるのを待つのではなく、「え?友達かよ?」ってくらい自然に先生と話し始めます。もちろん他の学生もいる前で。
この感覚は結構な驚きかもしれません。日本のマンモス講義に比べ、アメリカは少人数クラスの授業スタイルが多い(もちろん大学にもよりますが)。先生と生徒の距離が近いのもあり、授業中は積極的な参加が求められます。
その典型がディスカッション。日本の大学ではあまり一般的ではないですよね。
上で書いたように、大体授業の始めに先生が問いを投げかけて始まり、学生が自分の意見を自由に述べます。自由といっても「自由気ままに感想を述べる」という意味ではなく、ちゃんと自分の主張と根拠を語り、なるべく論理的に意見を述べる。そう、アカデミック・ライティングと基本は変わりません。
先生が途中で意見をまとめたり、発展的な質問を投げかけたりして、議論は更に盛り上がります。もちろんぼーっと見ているだけではダメ。英語が不自由でも、積極的な発言が求められます。参加度合いが成績にも大きく響きます。
エッセイの比重が大きい
3つ目の特徴は、ずばり「エッセイ」です。特に文系科目の場合は、ほぼ必須と考えて良いと思います。日本の大学でも、学期末にA4で2~3ページの小論文を提出する授業がありますよね。それと同じです。
親切なクラスでは、学期の最初の授業で、先生が論文のテーマを説明してくれます。例えば政治学の授業であれば、「このクラスでは特に“政治と女性”をテーマにした課題図書を二冊読み進めます。各著者の主張を要約・比較し、自分の意見を 1,000 words でまとめたエッセイを期末に提出してください」といったアナウンスがあります。
ただ単純に知識をつめこむのではなく、知識を基に自分の意見を形成、アウトプットする。ディスカッション、エッセイ共に共通するアメリカの授業スタイルの特徴です。
これがまた言うのは簡単ですが、高校(下手したら大学?)まで自分の意見など求めてこられなかった日本人にとって、超・難儀なんですよね……。
私の場合、「日本語ですらそんなこと考えたことないのに、英語で自分の意見を述べよって…しかも要約?比較しろ…?っていうか、リーディングの宿題終わらせるだけで手一杯だー!」という感じで、もう逆ギレしてました。
授業を乗り切るためのポイント
最初は逆ギレ→落ち込む→逆ギレ→落ち込むを繰り返していた私でも、最後は一応それなりに良い成績で卒業することが出来ました。
しかし、そこに至るまでには沢山の失敗を重ねています。そんな失敗談を踏まえて、授業を乗り切るコツをご紹介したいと思います。
良い成績を取りたかったらシラバスを熟読せよ
良い成績を取るためには以下の3つを実行してみてください。
- 学期初めにシラバスをちゃんと確認する
- office hour を活用する
- TAを活用する
特に大事なのが①です。シラバスとは講義内容や授業計画、評価基準、教員の連絡先から連絡の取り方までが網羅されている重要な文書です。
留学当初、私はこの紙の重要性を知りませんでした。単なる「ご案内」くらいにしか捉えていなかった。その結果、他のクラスはほぼ A か B だったのに、生物学の授業で記念すべき「C」という評価をもらう羽目に。
生物学の授業は「lecture(講義)」と「lab(実験)」に分かれていたのですが、日本の感覚を引きずっていた私は「どうせ期末の筆記テストで暗記問題が出るだろう。だから lecture はしっかり聞こう」と勝手に判断し、lab は何回かサボってしまったのです。案の定シラバスには「このクラスでは “lab” での積極的参加を重視している」とハッキリ書かれていました。
みなさんはこんな初歩的ミスを犯さないと思いますが、念のため、シラバスは学期初めにきちんと確認しておきましょう。シラバスだけでは理解できない場合、先生に直接聞きに行ってもOK。中には「10回以上の発言を求める」先生もいるそうです。
ちなみに教授が研究室にいて、自由に質問や相談に行ける時間のことを「office hour(オフィスアワー)」と呼びます。オフィスアワーの時間もシラバスに載っています。ふらっと立ち寄って対応してくれる教授もいれば、事前に予約が必要な先生もいます。こちらもシラバスで確認してください。
教授に相談しにくいな~という人は、TA(Teaching Assistant:教授の助手)を活用しましょう。大学院生が TA を務めているので、年齢も割と近く、コミュニケーションも取りやすいかと思います。
大量のリーディングをこなすための裏技
大量のリーディング・アサイメントをこなすには、
- 日本語で一般教養知識を入れる
- Skimming のスキルを身につける
この二つを日本にいる時から準備しましょう。
一般教養知識というと幅広いですが、1~2年課程では必修で何らかの一般教養科目を取ることになります。自分の専攻以外で履修予定の科目を洗い出し、出来るだけ日本語で基本知識を入れておきましょう。
日本で入れていった知識でもカバーできない場合は、リーディング・アサイメントに出てくるキーワードや著者の名前をネットで検索し、日本語記事を先に読む! これはメチャクチャお勧めの時間短縮法です。ズルでも何でもありません。立派な情報収集スキルです。
どのようにキーワードを見つけるかというと、Skimming(スキミング)というスキルを使います。スキミングとは、文章の要点をつかむために重要な部分だけを探して読む速読技術です。
日本語の文章でも、先に目次を読んだり飛ばし読みをして、なんとなく概要をつかみますよね。それ同じで、英文も小見出しやパラグラフの第一文(=トピックセンテンス)を読めば、大体の内容をつかむことが出来ます。論文なら冒頭に Summary(要約) が載っていることもあるので、そこからキーワードを拾うようにしましょう。
エッセイは writing lab を使い倒す
最後に大取のエッセイの乗り切り方です。
正直、エッセイに「乗り切る」という裏技はありません。コピペなんて言語道断。一言一句、自分の力で書き進めなければなりません。
日本に居ながらライティングの基本的な力を伸ばすには、TOEFL や IELTS の試験勉強が最も効率的だと思います。本サイトのライティング関連の記事を参考にして、一緒に努力していきましょう。
留学が始まった後は、学校内にある「Writing lab(ライティング・ラボ)」を活用しましょう。ライティング・ラボは、学生の文章作成を手伝ってくれるセンターです。基本的な書き方から構成の仕方、文法ミスや語彙の使い方まで丁寧に指導してくれます。
もちろん無料です。「こんなひどい文章見てくれるのかな…」なんて自分の英語力を謙遜せず、どんどん使い倒しましょう。
エッセイは山登りのように、自分の足で一歩一歩進んでいかなければ頂上に到達することはできません。でも、小さな一歩でも歩みを止めなければ、必ず頂上に到達することが出来ます。
1学期という時間は長いようであっという間。早いうちからエッセイに取り組んで、何とか書きあげましょう!日々の努力の積み重ねは、将来の絶対的な自信につながるはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。少しはアメリカの大学の授業の様子がイメージできましたでしょうか?
最初の内は大変だと思いますが、徐々にアメリカン・スタイルに慣れてきます。英語力が伸びれば、楽しむ余裕すら出てきます。
困ったことがあっても一人で抱え込まずに、先生やTA、クラスメイトを頼って、楽しい学生生活にしてくださいね。応援しています。
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