本文は読めているはずなのに「設問の意味が分からない」、「正しい選択肢が選べない」という時ってありますよね。
TOEFLの問題は本当に難しい。もともと米国大学の授業についていけるかを測るテストなので、単語を知っているレベルでは立ち向かえません。
正解率を上げるためには「精読」の練習も大事ですが、同時に「読解力」を磨く必要があります。
読解力とは、論理的思考力を使い、筆者の主張を客観的に読み解く力です。「なんとなくこう思った」では、いつまで経っても正答率は上がりません。
読解力を磨けば、設問で問われるポイントが、まるで浮かび上がってくるように読めるようになります。
この記事を読むと、TOEFLに必要な読解力が何かイメージ頂けると思います。読解力を磨き、問題の正答率を確実に上げていきましょう。
※この記事はTOEFLを事例として扱っていますが、IELTSにも共通して必要な読解力について書いてます。IELTSのリーディングにも十分活かせる内容ですので、IELTS派の方も良かったらお読みください。
TOEFLに必要な読解力とは
TOEFLのリーディングに必要な読解力は、次の3つの論理的思考力に分けられます。
- イコールの関係
- 因果関係
- 対立関係
論理的思考力とは、文と文の関係を見抜く力です。上3つは、日本人が小学生の国語で習う項目です。
それぞれの内容を細かく見る前に、まず簡単な読解力チェックをしてみましょう。
次の文に続く内容を皆さんで考えてみてください。そして、各文が①イコールの関係、②因果関係、③対立関係のどれに当てはまるかお考えください。
- I like books. That is…
- I like books. In other words…
- I like books. Because…
- I like books. So…
- I like books. On the other hand…
- I like books better than…
どうでしょうか。太字部分に注目すれば、そんなに難しくはないかと思います。
答えは、①~②がイコールの関係、③~④が因果関係、⑤~⑥が対立関係です。
このように同じ文章から始まっていても、接続語が変わると文の関係も変わります。文と文の論理的関係を見抜けなければ、TOEFLの長文を正しく理解することは出来ません。当然、正しい選択肢を見抜くのも難しいでしょう。
これら3つの論理的思考力は、現代文の講師として有名な出口 汪氏の『子どもの頭がグンと良くなる!国語の力』(水王舎)で紹介されていたものです。
上の問題も、この本で紹介されていた内容を英語版へとアレンジしたものです。「難しくて解けなかった…。」という方は、日本語の読解力も意識してみてくださいね。
TOEFLで問われる設問パターン
なぜこの3つの論理的思考力が大事かというと、TOEFLで最も問われる設問パターンを、ほぼカバーすることができるからです。
TOEFLのリーディングで問われる設問は、以下のパターンに分類できます。このうち1~6までは、すべて3つの論理的力で解くことが出来ます。
1 | 本文箇所を言い換えた選択肢を問う |
2 | 事実や論理関係を問う |
3 | 本文全体または特定の段落の論旨を問う |
4 | 段落の構成や議論のトーンを問う |
5 | 本文の続きを予測させる |
6 | 指示語の内容を問う |
7 | 表現、語彙 |
イコールの関係
最も典型的な設問が、1番の「本文箇所を言い換えた選択肢を問う」問題です。選択肢では、本文中の主張が要約された形で、別の言い方で表現されます。
つまり何と何が「イコールの関係」か、見抜ける力が必要となります。
アカデミック・ライティングの記事でも説明しましたが、論文は基本的に主張・理由・具体例の繰り返しです。
まず主張が述べられ、その後に理由が続く。不特定多数の読み手にわかりやすく伝えるため、具体例を出す。抽象的な主張、具体的な事例の間を行ったり来たり。
例えばTOEFLでは、
という問題が出ます。これは、イコールの関係として言い換えられているもの、具体例として挙げられているもの、例えばと言い換えられているものを、きちんと読み取れているかが問われているのです。
「”That means” の “That” は何を指しているか」とダイレクトに指示語を問う問題もあります。この手の問題もイコールの関係を見抜く力が求められます。
因果関係
次に大切なのが「因果関係」を読み取る力です。因果関係は、いわゆる「原因」と「結果」。
先ほどの表でいうと、2~5番までカバーできる、土台となる論理的思考力です。実際の設問では「何が原因か」「結果として何が起きるか」が問われます。
例えば自然科学系の文章では「温度が変わるとどうなるか?」、人文科学系では「何が引き金で○○という法律が制定されたのか?」といった因果関係を意識しながら読む必要があります。
ここで大事なのが、because や as といった理由を表す接続詞と、因果関係を表す動詞をおさえることです。
特に重要なのが因果関係を表す動詞。cause、result in / from などが代表例です。
ちなみに “result” は後ろに “in”がつくか、”from”が来るのかで、因果関係が真逆になります。
- A result in B.(AがBという結果をもたらす)
- B result from A. (Bという結果はAによって起こる)
その他、次のような動詞やイディオムも覚えておきましょう。
他にも、because や as(接続詞)が省略された分詞構文や、結果を表す不定詞を使って因果関係を表現する場合があります。これらはしっかりした文法の知識がなければ読み解けません。
接続詞や分詞構文の理解が怪しい方は、ぜひ文法に立ち戻って基礎を固めていきましょう。
対立関係
最後は「対立関係」です。
ある主張をわかりやすく伝えるため、正反対の主張を持ち出すという手法は比較的よく用いられます。
例えば「生きるとは何か」を伝えたい場合。抽象的すぎて、「生」という概念を伝えるのはそう簡単ではありません。
ところが生の反対である「死」という話を持ち出したらどうでしょう。「死に直面して生きることの尊さを実感した」という話を聞いたことはありませんか。
このように、何かと何かを比べることで話はぐっと分かりやすくなります。
TOEFLのリーディングでは、この対比構造がよく出てきます。対立関係を読み解く力があれば、先ほどの表の3~6番に対応できます。
「なにがどう異なるか」「どれが正しいか」という設問が一般的です。
一方以下の設問のように、比較している部分が真逆の選択肢が用意されているケースもあります。
1) A is greater than B.
2) B is greater that A.
AとBのどちらが greater なのか、冷静に読み取ることが求められます。上の例文は簡略化していますが、実際の問題文はより複雑です。
例えば次の文章は、何と何が対比されているかわかりますか?
Ancient people had much more scientific knowledge than we usually recognize.
***
「 Ancient people は『古代の人々』だから…昔の人と現代人が持つ科学的知識を比べているのかな?」と考えた人は、残念ながら間違いです。
この文章の意味は
古代の人々は、私たちが通常考えるよりもはるかに科学的な知識をもっていました。
です。
ですから正解は「古代の人々が実際に持っていた科学的知識」と「私たちが通常抱く憶測」とを比べているのです。
対比関係を見抜くには、やはり比較級の文法知識が必須です。その他次のような表現も覚えておきましょう。
全てに共通:正解は文中にある
TOEFL iBTの■の挿入問題やYES/NO問題、TOEFL ITPの第一問などは総合問題です。イコールの関係、因果関係、対立関係を読み解く力があれば、正解を導くことが出来るはずです。
よく言われることですが、答えはすべて文中にあります。たまに面倒くさがって正解の根拠(文)を特定せずに復習している人がいますが、これでは読解力は伸びません。必ず根拠を探す癖をつけるようにしましょう。
という人は、特定のパラグラフだけでもいいです。TOEFLは問題とパラグラフが連動していますので、構造を読み取れるように意識して復習をしてみてください。
ご紹介した3つの論理的思考力を意識して読むのと読まないのでは、正答率に大きな差が生まれます。限られた時間で正解を導くためにも、ぜひ今日から読解力向上に取り組んでいきましょう!