最近話題のビジネス書『ロングゲーム ―今、自分にとっていちばん意味のあることをするために』を読みました。
結論から言うと、働きながら留学を目指す人や、IELTSのスコアが伸び悩み長く苦しむ人にとって、とても励みになる本だと思います。
著者が主張する「長期思考」を身に着ければ、本当に大切なことを優先する勇気もわくし、どんなに打ちのめされても、もう一度立ち上がろうと思えてくるはずです。
英語の勉強に疲れたり、仕事に忙殺されて勉強が後回しになってしまっている方は、ぜひ気分転換に読んでみてください(キャリアを考えるという意味でも非常に参考になります)。
The Long Game (ロングゲーム)とは
『ロングゲーム ―今、自分にとっていちばん意味のあることをするために』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、世界のトップ経営思想家にも選ばれたドリー・クラーク氏による日本初の単行本です。
ジャンルでいうと、自己啓発やキャリア本にあたります。
めちゃくちゃ簡単に要約すると、「ビジネスで長期的な戦略が重要なように、人生にも長期的な戦略をもちましょう。短期的な思考を捨て、自分にとって最も大切な目標を実現させましょう。」という感じです。
副題にあるとおり「今、自分にとっていちばん意味のあることをするために」という言葉が刺さりますね。
「毎日忙しくしているけれど、今やっていることは、果たして意味があるのだろうか?」
「これを続けた先に、自分が望む未来は待っているのだろうか?」
一所懸命働いていれば、誰しもそんな風に不安に感じることはあると思います。
おそらく本ブログの読者の方は、そうやって自分に質問した結果、「やっぱり留学しよう!」と決意された方ではないでしょうか。
英語の勉強こそ必要な長期思考
これはキャリアについて書かれている本ですが、英語の勉強にも大いに当てはまります。
IELTS や TOEFL のように、難易度の高い英語試験に取り組んでいると「目の前の勉強は意味があるのだろうか?このまま続けていて、本当に目標スコアに到達するのだろうか?」と不安になる時期が来ます。
目標スコア未達=いつまで経っても留学できないと想像すると、そりゃあ心が折れそうになりますよね。
ただ残念ながら IELTS はすぐに結果が出るタイプの試験ではないので、結果が保証されていない中でも自分を信じて地道に進む胆力が求められます。
そこで、この本に書かれているいくつかの視点を英語学習に当てはめながら、
- 短期思考がIELTSの勉強に及ぼす弊害
- 忙しくてIELTSの勉強時間が割けない人へのアドバイス
- スコアが伸び悩んで焦っている、不安で仕方ない人へのアドバイス
について解説したいと思います。
短期的思考の弊害
IELTSの勉強を後回し・先延ばししてしまう
日々の忙しさにかまけて目の前のことばかりを優先していると、本当に大事なことを後回しにしてしまう。留学実現においては、まさに英語(IELTS)の勉強こそが最優先すべき時間です。
しかし、実際に勉強時間を優先できている人は少ないです。この一年で数十名の方のIELTS・留学相談に乗らせていただきましたが、そのうち実際に勉強を始められた方はたった数名。
すこし厳しいことを言うかもしれませんが、「勉強を始めた」という方でも、もしそれが週に1回、1時間程度しか勉強していないのであれば、なかなか「始めた」とはみなしにくいです。
もちろん何もやらないより遥かに素晴らしいのですが、週に1時間程度の勉強で上達するほど、IELTS はあまくありません。
すぐに結果が出ることを期待してしまう
短期的な思考を優先し続けると、知らず知らずのうちにすぐ結果がでることを期待してしまいます。
IELTS で言えば、一回のテストで目標スコアに到達するのを期待し、できなかったらすぐに諦めてしまうようなもの。
すぐに結果が出ると期待していると、スコアに到達しなかった時の落ち込みが深くなります。
その結果、一度拒絶されただけで諦めてしまう、または拒絶されるのが怖いからいつまで経っても試験を受けない、といった状況に陥りやすくなります。
勉強のやり方をころころ変える
すぐに結果を求める思考と関連していますが、結果が出ないと(というより出る前に)勉強のやり方をころころ変える方がいます。
長期思考が欠けていると、つねに行き当たりバッタリで、目の前の刺激に反応し、やり方をすぐに変えてしまいます。
これを英語学習に当てはめると、SNSで流れてくる情報などにいちいち反応して、勉強のやり方や教材をころころ変えるという状態です。
すべての教材が中途半端でやり切れない。伸び悩む方の典型的な勉強方法です。
常に実行モードで勉強の中身を振り返らない
常に実行モードで走り続けることの弊害は、間違ったやり方を続けてしまう可能性があることです。
勉強時間は長いのにスコアが伸び悩む方の多くは、この振り返り作業をしていません。
振り返るという行為は、実行に比べてはるかに難しいです。なぜなら考えなければならないから。
計画は立てたのに行動に移せていない。出来ていないのは自分が一番わかっている。
そのような状況だと、振り返るのが辛くなります。振り返りは自分に向きあう強さと、できていない自分を認める勇気が必要です。
逆に振り返り(分析)ばかりで実行(勉強)が少ないのも困りますが、勉強の中身を見返さずに、ただやみくもに暗記したり、問題を解くのはあまりお勧めできません。
「なぜ今この時期に精読を特訓する必要があるのか?」
「何を意識して音読をしているのか?」
など、一つ一つの勉強内容の目的を意識しながら勉強に取り組みましょう。
忙しくて英語の勉強に時間が割けない人
それでは二大お悩みの一つ、「忙しくて英語の勉強に時間が割けない」人へ役立つアドバイスをみていきます。
成果を最大化するには、最も大切な一つの目標に全集中
「成果を最大化するには、最も大切な一つの目標に全集中したほうがいい(p.132)」
これはまさに超重要アドバイスだと思います(唐突ですがドラッカー先生も、成果を出すなら大きくまとまった時間が必要だ、小さな時間は役に立たない、と言っています)。
IELTSのスコアメイクにも同じことが当てはまります。もし IELTSのスコアを一気に伸ばしたいなら、何もかも捨て、IELTS の勉強に専念できる環境を作るのが最も理想的です。
実際、私がこれまで指導した生徒さんで短期間に成果を出している方は、全員仕事を辞めた状態で IELTS の勉強だけに全集中していました。
しかし、これは多くの社会人にとって難しい選択肢かもしれません。
いきなり仕事を辞めれば給料は入ってきませんし、スコアが伸びるかわからない中でその一点に賭けるのはリスクも高いと感じるでしょう。
余白を作る
ということで、実際、多くの方は仕事をつづけながら英語の勉強をしています。
しかし、もし今の仕事がすでに100%の状態ならば、IELTSのような負荷の高い勉強を続けるのはかなり大変です。
「すでに満杯になっているコップに、それ以上液体を注ぐことはできない(p.34)」
まさにその通りで、現状が100%ならば、そこに IELTS の勉強をプラスして 120% の力で走り続けるのは無謀な挑戦です。
そもそも長続きしないですし、勉強の効率も効果も両方低い。
結果的に「ほそぼそと勉強はしているのにスコアが伸びない」というダークトンネルに長く滞在することになってしまいます。
誤解がないように補足すると、ほそぼそと勉強を続けるのが悪いというわけではありません。むしろ英語は続けることが最大の近道なので、細々でもやらないよりはやった方が絶対に良いです。
ただ IELTS のように留学・出願までに〆切があるタイプの試験ですと、細々と勉強していては数年かかってしまう可能性があります。
そうすると、出願を先伸ばし、仕事をつづけながらさらにもう一年勉強するという状況が待っていて、精神的に辛いと思います。
なので、IELTSの勉強を始める前に「何か捨てられることはないかな?」と考えてみてください。
20%ルールを導入する
そうやって余白が出来たら、20%ルールを導入します。グーグルが始めたことで有名な、仕事時間の20%を新たな挑戦に充てるという取り組みです。
「この時間のおかげで、興味のある分野を探求する余裕が生まれる。すべての時間を注ぎ込みはしないので、リスクも低く抑えられる(p.106)」
急に辞める、つまりすべてをゼロにするのではなく、20%だけ投資すると考えればハードルがぐっと下がりますよね。
実際に、今の生活を見直して20%の自由時間を捻出するのは大変です。
とはいえ、挑戦しなければ現状は変わらないことも事実。挑戦に成功した具体的なエピソードなどはぜひ本書を読んでみてください。
何度もIELTSに挑戦しているのに、結果がでなくて焦っている人、不安に駆られている人
恐らくIELTSの勉強で最も悩ましいのが「何度もIELTSに挑戦しているのに、結果がでなくて焦ってしまう、不安に駆られてもうやめたくなる」だと思います。
自分にとって挑戦的なスコアを目指している方であれば、誰でも経験する瞬間です。
こうした不安や焦りに対する解決策が、まさに本書で強調する長期思考です。
本のタイトルでもあるロングゲームをプレイするというのは、
「目先の利益の誘惑に負けず、不確実ではあるが、価値のある将来の目標に向かって努力を続ける(p.21)」
こと。
価値のある将来とは、私たちの場合は留学、あるいは留学中の学び、出会い、そして留学後に待っているキャリアかもしれません。
私たちが勉強するのは、IELTSのスコアを取るためだけではなく、その先に待つ価値ある将来のためなのです。
成功するまでに本当に必要な時間や努力を知る(p.267)
「ほかの人はどうやって成功したのか?(p.230)」
著者は、目標達成には成功した人が費やした時間を正確に知ることが重要だと述べています。
この「正確に知る」というのが極めて大切です。
例えば私の場合は、初めて受けた IELTS で OA8.0 というスコアを取りました。勉強した時間は3か月で 200時間(手前みそで恐縮です)。
ではこれが OA8.0を取るのに正確な必要時間か?と問われれば、答えはもちろん「ノー」です。
私には海外経験が4年半ほどあり、それに加えて受験勉強も中高併せて2年間あります。それらを合計すると、英語学習に費やした時間は悠に2万時間を超えます。
その2万時間の蓄積の上にある「200時間」です。
1,000 時間勉強してもOA 8.0に届かなかったと嘆いている人は、私の20分の1の努力でそこに到達できないと嘆いている、ということになります。
ちょっと極端な例ですが、英語ができるようになるのに2万時間必要だと思えば、1,000時間で達成できなくても当然だ、と気持ちが楽になりませんか?(笑)
短期思考の弊害でも述べましたが、すぐに結果が出るという期待は捨ててしまいましょう。
実験であれば、どんな結果も失敗ではない(p.245)
高い目標を掲げているのですから、失敗してあたりまえ。
失敗=そこで終了と捉えてしまうと本当にゲームオーバーですが、失敗=実験に役立つデータ収集と考えれば、また目標に向かって歩き出すことができます。
IELTSのスコアが悪くても、それは今の自分に足りない部分を教えてくれるデータと考えれば、勉強計画の修正に役立ちます。
過程をしっかり楽しむ(p.275)
同様に、スコアの結果はあくまで通過点という姿勢も大切です。
スコアが低いとついダメだった部分に注目しがちですが、できた部分もしっかりと受け止めます。
「来た道を振り返り、自分が達成したことを祝福しなければならない。そうすれば、さらに旅を続ける気力がわいてくる(p.277)」
振り返りは結果だけでなく、プロセスも見ます。これまでに積み重ねた勉強の記録を振り返れば、自分をほめることもできます。
そうして、次の一歩をまた踏み出そうというモチベーションにつなげていきましょう。
長期思考をもって、IELTSの勉強を頑張ろう
長期思考は、IELTS や留学という不確実要素が高い挑戦にはとても有益な考え方です。
本書では、ここにご紹介したアドバイス以外にも、人生に役立つ名言が随所に散りばめられています。
仕事やその他のことを優先して IELTSの勉強を先延ばししている方や、スコアが伸びずに焦っている方は、ぜひとも読んでみてください。