「人生は壮大な実験」という信念のもと、会社員とフリーランスを行き来して、自分なりの働き方を模索しています。
キャリアを転々とする自分だからこそ見えてきたフリーランスと会社員の違いについて考えてみました。
会社を辞めて独立を考えている、またはフリーランスから会社員へ戻ることを検討している人に役立てば嬉しいです。
※この記事は『フリーランスから会社員に戻って得たもの、失ったもの【前編】』の続きです。
副業が身近になって、いずれは起業やフリーランスとして独立する選択肢は、今や普通になりつつあります。 しかし、 独立後は食べていけるのかなんの取り柄もない自分にできるのかそもそも起業は向いているのだろうか など、不安を抱え[…]
会社員に戻って失ったもの
「お金」「仕事」「プライベート」の3つの切り口で考えてみたいと思います。
お金
経済的側面で失ったものは、大きく次の二つ。
- 「いくら」稼ぐか決める権利
- 「いつ」もらうか決める権利
「いくら」稼ぐか決める権利
一度フリーランスを経験すると、いくら稼ぎたいかを自分で決められないのは、とても辛い。
というより「こんだけの仕事を提供したのに、これしかもらえないの!?」と強く感じるようになる。それは自分の仕事が評価されていないのと同じこと。
独立すると、お金は「給料」から「収入(もしくは売上)」へと変わります。銀行口座に毎月チャリーンと振り込まれるものではなく、仕事の対価として振り込まれます。
稼ぎたいなら、頑張って仕事の付加価値を上げる。その見返りに高い報酬をもらう。めちゃくちゃシンプルです。
でもこれが会社員になると、自分が提供する価値に対して値決めや交渉ができなくなる。
「え?なんでなんで? 私の中身も私が提供する仕事の質も変わらないのに、会社員になった瞬間になんでこんな安くなっちゃうのー!」
と、叫びたくなる感じですね。
自分の期待値より給与が高い場合はいいんですけど、給料が低い場合、かなりのストレスになります。
ちなみにこのストレスの原因は、給料の低さそのものではありません。会社の物差しで一方的に評価され、こちら側には交渉する機会すらないのが辛い。
発注側と提供側のパワーバランスが全然対等じゃない。ずっと下請け状態。
フリーランスだったら、世の中の相場と比較しながら自分の値決めが出来ますよね。でも会社では、その会社独自の評価制度によって自分の値段が決められてしまう。
「いつ」もらうか決める権利
更に辛いのが、どんなに頑張ってもその評価をしてもらえるのは多くて年2回、通常は年1回の頻度で行われることです。
つまり、収入を上げるチャンスが年1回しかない。
無茶ぶりする上司のもとで必死で1年間耐えても、その忍耐力は評価してもらえない。数字だけで翌年の給与が決まる。
年収が決まれば、その年の支出計画もおのずと決まってきます。「冬はいっぱい稼いで、夏は旅行するかー!」なんて人生は送れない。
まあ、これはさすがに極端な例だとしても、いつ、いくら収入が入るかによって生活の仕方が制限されます。
「ボーナスの奴隷」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
会社を辞めたいにも関わらず「いま辞めたらボーナスがもらえないからもったいない。あと半年は耐えよう……」と言って、次のボーナスが出るまで辞めるのを引き延ばし、結局会社に居続ける人のことを指すそうです。
固定給与が入ってくる安心感を選ぶか、頑張りが収入に反映される納得感を選ぶか。悩ましいところです。
仕事
つぎに仕事を通じて失ったと感じるもの。
- 仕事を選ぶ自由
- 自己決定から得ていた充実感
仕事を選ぶ自由
会社員は「やれ」と言われた仕事は、基本やるしかない。
もちろん「そんな仕事は興味ありません」「私の業務範囲ではありません」と突っぱねられる強者も、なかにはいます。でも、そんな風に言える人は少数ですし、今後仕事が振られないリスクがあります。
「仕事を選べないなら、やりたい仕事を自分で創り出せばいい。」
はい。私もそう思って何度か企画書を提出しましたが、ことごとく却下。
「こんな嫌な仕事ばかり回してくるなら、私辞めますよ?」という脅しも、特殊技能を備えた唯一無二の存在でない限り使えません。
ちなみに「その人の強みを活かした仕事を任せよう!」とか「適材適所を実現しよう!」とよく言われますが、人材の配置はそんな簡単なことではありません。
誰さんとの相性が悪いとか、 予期せぬタイミングで仕事が取れたけど手が足りないとか、色んな要素で人と仕事の配置は決まります。
裏を返せば、本人の能力やヤル気だけで決まるわけではない、ということです。ここを正論で理解しようとすると「なんであの人には良い仕事が回って、オレはいつも損な役回りなんだ」とイライラすることになります。
こーゆー清濁併せ吞むのが苦手な人は、会社員あんまり向いてないんじゃないかと思います。はい、私です。
自己決定から得ていた充実感
フリーランスであれば、お客さんと比較的対等に付き合えるので、嫌な仕事にはノーが言えます。
もちろん独立したての時に仕事を断るのはリスクを伴います。それでも、どうしても嫌な仕事だったら断る権利がある。
「断る」カードが胸ポケットに入っているだけで、精神的安定感が全然ちがう。
会社員に戻ってしばらく経ち、この「自由に仕事を選べない」という状況が、想像以上に精神の充実度を左右することに気づきました。
自分で決められないから、やらされ感でいっぱいになる。やらされ感いっぱいだから楽しくない。生産性も下がる。新しいことにも挑戦しなくなる。
ちなみにこのモチベーション低下現象は「内発的動機づけ」や「フロー理論」など、心理学的にちゃんとした裏付けがあります。
人のモチベーションを内側から上げるためには自律性が不可欠です。自律性とは、自己決定感のこと。「自分で決めたんだ」と思える感覚が大事。
もう一つは仕事の難易度。人が最もパフォーマンスを発揮出来る状態=没頭した状態に入るためには、仕事の難易度と自分の能力が釣り合っている必要があります。
例えば、社会人10年目のベテラン社員に新入社員の仕事を与えると、退屈すぎてただの暇つぶしになる。逆に社会人1年生にベテラン選手の仕事を与えても、難易度が高すぎてパニックを起こすだけ。
人がハイパフォーマンスを出し続けるには、仕事の難易度と力量を、常に調整しなければならないのです。
部下一人ひとりに目を配って、適切なタイミングで仕事の難易度を変える。そんな細やかな配慮を現場で実行するのって、よほど優秀なリーダーでない限り難しいと思います。
自分で色々なことが決められる自由を味わってしまったフリーランスにとって、仕事を選ぶのが難しいという状況は、結構もどかしさを感じるかもしれません。
プライベート
最後にプライベート。
正直、会社員に戻ってプライベートで犠牲にしたと感じるものは思い浮かびません。でもそれは「絶対にプライベートを犠牲にしない」という強い覚悟があって会社員に戻ったからだと思います。
これもフリーランスを経験したからこその考えが影響しています。
経営はどんなに売上をあげても、それ以上にコスト(投入)がかかれば利益は出ない。つまり赤字です。
フリーランスの主な投入は自分の時間だけですから、利益を増やしたければ時間の遣い方を工夫するしかない。同じアウトプットなら、出来るだけ少ないインプットで仕上げたい。
その感覚をもって会社員に戻ると、残業なんてありえない。働けば働くほど利益を食いつぶすことになります。
もちろん投入ではなく、投資と考えることも出来ます。人より長く働いて成果を出し、一年後の昇給を狙うという戦略です。
確かにその戦略もありですが、1日2時間、月40時間も残業するなら、その時間を副業にあてた方がよっぽどコスパが良いのでは、とも考えられる。
私は後者の考えだったので「ダメ。残業、ゼッタイ。」をスローガンに掲げ、読書の時間、ブログの時間、趣味の時間は死守しました。
なので会社員に戻ったという理由で、プライベートで失ったものはほとんどありません。
しいて言えば、情報の感度が鈍くなったかもしれません。フリーランスの時は、しょっちゅう誰かと食事に行ったり、セミナーに出たり、情報収集&発信をしていました。
それに比べ、会社員に戻ると(特に営業職でなかったため)そこまでアンテナを立てる必要がなくなりました。そんなことをしなくても、会社からいくらでも仕事が降ってくるからです。
まとめ
前編&後編にわたって、フリーランスから会社員に戻って得たもの、失ったものを考えてみました。
書ききれなかったこともまだまだあるのですが、3,000文字超えてきたのでそろそろやめようと思います。
実名で、しかもまだ会社員という属性(※2019年3月当時)でこのブログを書いたことで本当に失うものが見えてくるのではないかと、足が震えております。
このブログを通じて伝わったかわかりませんが、会社員もフリーランスも、両方メリット・デメリットがあります。そして何より向き・不向きがあると思います。
会社員は不自由だけど一応安定はしてるし、長い人生、どこかでその不自由さを味わう期間が必要かもしれません。そもそも会社員で不自由感じてないって人も沢山いると思います。
一方、フリーランスや独立に憧れてたけど、やってみたら全然向いてなかった、って人もいます。自由って一見聞こえはいいけど、なんでも自分で決めるって結構ハードですから。
会社員からフリーランスになって、また会社員に戻るケースは今後確実に増える気がします。もしあなたがその道のどこかで悩んでいるとしたら、大分偏ってますが、このブログが少しでも参考になれば嬉しいです。