フリーランスから会社員に戻って得たもの、失ったもの

副業が身近になって、いずれは起業やフリーランスとして独立する選択肢は、今や普通になりつつあります。

しかし、

  • 独立後は食べていけるのか
  • なんの取り柄もない自分にできるのか
  • そもそも起業は向いているのだろうか

など、不安を抱える人も多いかもしれません。

私はこの5年の間に、会社員からフリーランスになり、また会社員に戻るという経験をしました。

普通の人は、そんな履歴書を汚すキャリアパスを歩もうとは思わないでしょう。はい、私も全然歩むつもりはありませんでした。

でも人生って思い通りにいかない。想定外って自分の身にも起こるんですね。なので今は「人生は壮大な実験」と捉えることにし、色々楽しんで生きています。

今日はそんな私の体を張った実験結果から、フリーランスから会社員に戻って何を得たか、逆に何を失ったのかを考えてみたいと思います。


目次

  • フリーランスとして独立した経緯
  • フリーランスから会社員へ戻る決断
  • 会社員に戻って得たもの
    • お金
    • 仕事
    • プライベート

フリーランスとして独立した経緯

まず最初になぜフリーランスになったのか、少しだけ経緯をお話しさせてください。

私の場合、自分の意志とは無関係に独立することになりました。というのも、当時勤めていた会社は、離職率が半端なかった。毎月誰かが辞めている状態。

あまりに社員が辞めるので、気づけば社長と私の二人きりになっていました。それまで4〜5人で回していた会社の業務を、ほぼ私一人で回すことに。

それだけ働いていれば、さすがに体調も崩します。数日お休みをもらったあと、今後の進路について社長に相談しました。

すると社長は「もう明日から来なくて大丈夫!体調優先して!」と満面の笑み。

え? 明日から来なくて大丈夫? ん?どーゆーことだ。退職とは言ってないけど。しかも仮に退職だとして、明日から無職???

もうこの先そんなに長くは勤めないだろうと思ってはいましたが、まさか翌日から無職になるとは。まさに予想外の展開。

こうして私の会社員生活はあっけなく幕を閉じたのです。

普通だったら相当焦りますよね。でも、その時の自分には焦る気力する残っていなかった。焦って転職しても、またブラック企業に入ってしまうかもしれない。だったら少し休もう。

そう決めて2~3か月は何もせず、公園に行ったり、公園に行ったり、公園に行ったりして、ただただ体力と気力の回復に努めました。

そうやってフラフラするうちに、独立した先輩達から「暇なら仕事手伝ってよ」と声がかかるようになりました。

「正社員として働く気はないですけど、ちょっと手伝うくらいなら……」なんて生意気な返事をしているうちに、気づけば生活するには困らない程度に仕事をもらうように。

まったくラッキー以外の何物でもなかったと思います。

フリーランスから会社員へ戻る決断

そんなふうに無目的で独立したもんだから、案の定得意の「自分探しの壁」にぶつかりました。

何のためにフリーランスしてるんだ?
これが本当に自分のやりたいことだったのか?
このまま続けていいのだろうか?

この壁は、おそらく多くの駆け出しフリーランスがぶち当たるだろうと思います。(その時の迷いや葛藤はこちらに詳しく書いてあるので、今まさにその壁にぶつかっている人はよかったらどうぞ。
『フリーランスでも経営理念に共感できなければ長く一緒に働けない』)

悩みながら2年ほどフリーランスとして働きましたが、色々と考えた結果、会社員へ戻るという結論に行きつきました。

そういえば当時、独立してから会社員に戻った知り合いは一人もいませんでした。独立した人が会社員に戻るのは、なんとなく負けた感じがするんですかね。プライドが邪魔してやめられないって人もいると思います。

私は周りにどう見られるかよりも、このままフリーランスとして働く道が自分の望む人生なのか、向き合わずに続けることが怖かった。

「めんどくせーやつだな。そんなこと考えなくていーから目の前の仕事頑張れよ」

って言われることもよくあります。よくわかります。

でも、ダメなんですよね。もう30年以上めんどくさい感じで生きてきちゃったから、そーゆー性格なんです。生きる意味とか、原点とか、立ち止まって考えないと前に進めないめんどくさいやつなんです。

そんなめんどくささも自分の一部なんだと認められるくらいには年齢を重ねたので、改めて自分の人生に向き合ってみました。

そしたら、学生時代に追いかけていた夢がよみがえってきた。

小さな頃から憧れていた国際協力という仕事。この夢に挑戦せずには終われない。

もし国際協力の世界に飛び込むなら、開発コンサルティング会社かNGOに就職するのが手っ取り早い。新しい業界に挑戦できるのは最後かもしれない。

そんな焦りやノスタルジーが急に押し寄せてきて、即、ODA(開発援助)事業を行う開発コンサルティング会社で働くことに決めたのでした。

会社員に戻って得たもの

こうしてフリーランス生活にピリオドを打ち会社員生活に戻ってみると、フリーランスを経たからこそ見えてきた会社員として得るもの/失うもの、がありました。

それについて、「お金」「仕事」「プライベート」の3つの側面から考えてみたいと思います。

◆お金

まずは経済的側面で得られたものはこちら。

  • 固定給与
  • あらゆる福利厚生
  • 移動交通費
  • PCなど備品にかかる経費
  • 研修補助費

当たり前ですが、固定給与が入るというのはデカい。フリーランスを経験すると、固定給与のありがたみが身に染みます。お金そのものというより、毎月給与が振り込まれるという安心感が身に染みるのです。

また保険や年金など、めんどくさい手続きを人事総務がやってくれるのも助かります。こうした本業以外の事務手続きはいかに時間が取られるか、独立して初めて痛感したところです。

移動交通費や打ち合わせにかかったコーヒー代など、会社が出してくれるのもすごい。

経費は会社が払って当たり前……ではありません。働く場所(家賃)も、ノートパソコンなどの備品も、 誰かが稼いでくれたおかげで投資ができます。

仕事環境を整えるにはお金がかかるんですねー。「通勤なしで、近所のカフェで働けるなんて最高!」と感じるのも独立して最初の2~3か月くらい。働く場所が用意されてるのって、実は恵まれたことなんです。

◆仕事

次に仕事から得られたものについて。

  • 個人では受注できないだろう規模の仕事経験
  • 自分では気づけなかっただろう得意分野
  • 仲間

個人では受注できないだろう規模の仕事

会社員に戻る最大のメリットは、やっぱり仕事の規模だと思います。 会社の看板、実績、ブランド力、資源、ネットワークを最大限活用して、個人では決して受注出来ない規模の仕事が経験できる。

例えば私の場合、会社の仕事を通じて途上国政府の高官に会うことができます。彼らと一緒に、国の政策について議論したり、政策を実行することができる。こんな仕事はただのフリーランスの端くれだったら、決して経験出来ませんでした。

ただ、仕事の規模の大きさだけが重要とは思いません。会社としては大きい仕事でも、自分の担当部分は(言い方悪いですけど)誰でも出来る仕事という場合もあります。

「○○国の△△大臣と産業政策について議論したんだ~」と言えば、友達に自慢する分には聞こえはいいかもしれません。

でも、実際の裨益者、つまりはサービスを最終的に受け取る人たちから遠く離れてしまい、直接「ありがとう」と言われる機会は減りました。

フリーランスであれば、自分しか窓口がいないので、お客さんと直接やり取りすることができます。

仕事のデカさを取るか、お客さんからのありがとうを取るか。どちらが自分にとって大事かは、その人が決める問題です。

自分では気づけなかっただろう強み

フリーランスには、好きな仕事、やりたい仕事を選ぶ自由があります。しかし会社員に戻るとそうはいかないですよね。やりたくない仕事を断る権利はないに等しい。

私はずっと営業やマーケティング、ライティング、事業開発、採用などフロント寄りの畑を歩いてきたので、フリーランスの時はその経験を生かした仕事を受けていました。

ところが、今の会社ではなぜか財務・会計を担当することに。

経営コンサルタントとして多少の知識を持ち合わせていたものの、経理などの経験はありません。高校1年生で数学とサヨナラしたほど、数字に対する苦手意識があります。

とはいえ、仕事であればやるしかない。しぶしぶ簿記の勉強を始めたのですが、これがまあ想像以上に面白かった。簿記の世界はかなり論理的で、一度ルールを覚えてしまうと、パズルを解くような楽しさがあります。

それまで財務諸表の見方は知っていたつもりでしたが、作る側の知識も入ったことで、より面白く財務諸表が読めるようになりました。これは予想外の収穫でした。

こんなふうに、上司から依頼された仕事をこなす過程で自分の得意分野を発見することもあります。 自分が好き、あるいは得意と思い込んでいる仕事しかやっていなければ、新たな強みに気づくこともなかったかもしれません。

というより、強みって、大抵誰かに教えてもらうことの方が多くないですか?

自分が得意なことってあまりに自然に出来すぎて、他の人も当然出来るものだと錯覚しちゃうんですよね。でも、実はそうじゃなかったりする。誰かと比較して初めて強みが際立ってくる。

仲間

そんなこともあるので、誰かと一緒に働くのはやっぱりいいな、と思います。

仲間の存在がもたらすメリットは沢山ありますが、寂しがりやの人であれば帰属欲求を満たす効用は大きいかもしれません。

心理学者マズロ―の5段階欲求説が示すように、人間にはどこかに属していたいという欲求があります。会社員であれば、職場に行くだけで簡単にこの欲求を満たすことができます。

この「どこかに属している安心感」って、会社に居るときは当たり前のように享受しているので、独立するまで気づきにくいかもしれませんね。失って初めて気づくやつです。

仲間と切磋琢磨することで成長も出来るし、また自分が上司になれば、人を育てる機会に恵まれるかもしれません。

正直めんどくさいことも、上司にブチ切れそうになることもあります。フリーランスだったからこそ「またチーム会議? 一人でやった方が全然仕事速いわ~」って思うこともあります。

ここら辺の働き方のスタイルも、好みの問題かと思います。

◆プライベート

最後に、プライベートに最も大きく変化が現れたのはこちら。

  • 社会的信用
  • 土日休み

どこかで、「フリーランスはどんなに稼いで預金があっても賃貸の審査が通りにくい」という記事を読みました。これはマジで悲しい。

世間が抱く「会社員=安定、フリーランス=不安定」の図式を壊すのはなかなか難しいです。 会社員の持つ社会的信用の高さは、世間の人がそう信じる限り、今の日本ではまだ価値があるかもしれません。

また話は全然変わりますが、会社員になると週末が楽しみで仕方なくなります。

あれは何なんでしょう。金曜日に飲むビールのまあ美味しいこと。仕事の達成感や充実感というより、抑圧から解放された嬉しさで美味しく感じるのでしょうか。

真面目な話、週末は自動的に仕事から切り離されるという環境はとても大事だと思います。

自分で事業をやっていると仕事のことが365日頭から離れなくなる。

仕事について考えること自体が悪いわけではないですが、そのバランスが崩れて心身を傷つけたり、家族や友人を失うのは本末転倒。

フリーランス仲間には、自由になりたくて独立したのに、仕事のし過ぎで精神的にも時間的にも自由を奪われてしまっている人がいます。

この精神的自由時間的自由、また経済的自由はプライベートの充実度に大きく影響を与えます。

ここら辺は「会社員に戻って失ったもの」と合わせて考えてみたいと思います。

『フリーランスから会社員に戻って得たもの、失ったもの【後編】』に続く。