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なんで日本人はすぐに血液型を聞くの?

先日、フランスから日本に働きに来た友人にこんなことを聞かれた。

「この間の歓迎会で、日本人の同僚にいきなり血液型を聞かれたの。なんで血液型なんて聞かれたのかしら。

彼女があまりに深刻な表情で質問してきたので「それは単なる占いの一種だよ、日本人は血液型で性格を分類するのが好きなんだよ」と教えてあげた。

すると「私はてっきり輸血をしなきゃいけないのかと思ってビックリしちゃったわ!」と言ったので、思わず吹き出してしまった。

「リエは笑ってるけど、フランスでは血液型をいきなり聞くのは失礼なの。そんなプライベートな情報を簡単に聞かないわ」と真面目な顔で答えてくれた。

なるほど。

日本人が、遥々フランスからやってきた同僚を歓迎する意味で聞いた質問が、個人情報を聞き出す無礼な質問として受け止められてしまった。

日本では当たり前のことが、世界では当たり前じゃない。そんなことは教科書でも教わるが、こんな風に日常のコミュニケーションの中で起きる異文化体験は、色んなことを考えさせてくれる。

 

異文化に触れた時、あなたはどう反応する?

異文化に触れた時、あなたはどう反応するだろうか。

例えばあなたがアメリカ人のマイクと初めて打ち合わせをすることになったとしよう。

カリフォルニアのビーチと太陽を思わせるような満面の笑顔で「Hi! How are you?」と自己紹介が始まる。アイスブレイク代わりに互いの近況報告を終えると、「じゃあ今日の目的なんだけど…」と打ち合わせが始まる。

ミーティング終盤には、「結論は?」「次のTO DOは何?」「納期は?」と、かなりロジカルかつスピーディに話しが進む。「で、あなたはどう思う?」ずっと黙っていた日本人のあなたに、みんなの視線が注がれる。「うっ」思わず全身に冷や汗が流れる。何だか詰問されている気分だ。

 

次の日フランス人のルイと打ち合わせをすることになった。

「Bonjour!」と練習してきたフランス語で挨拶しようとする前に、「で、何か質問はありますか?」とほぼ無表情で、アイスブレイクもないまま打ち合わせが始まった

「なぜそうなのか?」「根拠は何か?」ミーティングの大半が”分析”に当てられ、一向に実務的な話に進む気配がない。結局最後まで、具体的な次のアクションは決まらずミーティングは終了した。特に意見を求められることもなかった。何だか大学のゼミにいる雰囲気だ。

 

さて、このような異なる状況を、あなたはどう感じるだろうか。もしアメリカ人と働いたことがあるのならば、前者の仕事の進め方を典型的なアメリカ人と思うのか。それともマイク個人の性格と感じるだろうか。

分析が得意で理論を重んじるのはルイ個人の話か。それともフランス人の一般的なミーティングスタイルなのだろうか。

仕事のやり方が異なるのは、異文化によるものか個人の性格によるものなのか。大抵の場合判断するのは難しい。

「◯◯人とは文化が違うから仕事が進まない」と単純化しすぎるのも問題だが、かといって「結局は個人による。文化など関係ない」という結論も強引な気がする。

”異文化 OR 個人の考え方の違い”ではなく、”異文化 AND 個人の考え方の違い”が、仕事に影響を与えると考えるのが妥当だろう。

 

8つの領域から成るカルチャーマップ

『異文化理解力』(英治出版)の著者、エリン・メイヤーは、異文化がビジネスに与える影響を可視化しようと試み、その功績は高く評価されている。

彼女はマネジメント要素を以下の8つの領域に分けた、カルチャーマップという文化の見取り図を作った。

  1. コミュニケーション:ローコンテクスト vs ハイコンテクスト
  2. 評価:直接的なネガティブ・フィードバック vs 間接的なネガティブ・フィードバック
  3. 説得:原理優先 vs 応用優先
  4. リード:平等主義 vs 階層主義
  5. 決断:合意志向 vs トップダウン式
  6. 信頼:タスクベース vs 関係ベース
  7. 見解の相違:対立型 vs 対立回避型
  8. スケジューリング:直線的な時間 vs 柔軟な時間

例えば1番のコミュニケーションについて。

ローコンテクストは、その文字通りコンテクスト(文脈や背景)の共通性が低い環境を指す。お互い共通項が少ないので、はっきりと分かるように、物事をストレートに伝えることが良しとされる

多様な人種が暮らすアメリカがその代表である。コミュニケーションに誤解が生じれば、それは話し手の伝え方に責任があると考えられやすい。

一方ハイコンテクストはその逆だ。曖昧なコミュニケーションが行われ、きちんと理解したかどうかは聞き手の責任だ。日本で「行間を読む、空気を読む」という表現があるのは、ハイコンテクストな文化だからだ。

例えば「橋」「箸」「端」のように同じ発音で全く違う意味を持つ言葉が多いのも日本語の特徴らしい。日本語では、はっきり意味を伝えずとも、聞き手が文脈の中で「ハシ」という二文字が何を意味しているか、察する力が求められる

 

相手の文化を理解していれば、適切な対応ができる

冒頭のマイクとルイとのやり取りは、実際に私が経験した実話である。

もしこのような場面に遭遇しても、カルチャーマップ3番目の「説得:原理優先と応用優先」の違いを知っていれば、打ち合わせの仕方が全く異なったとしても慌てることはない

エリンによれば、アメリカ人は一般的に応用を優先するために、実務的な結論を求める傾向にある。一方哲学思考が日常に浸透しているフランス人は、結論に至る前に、なぜそう考えるのか理論的部分に時間を割く。

繰り返しになるが、どちらの文化が良い/悪いの話では決してない。ただ、こうした文化の違いを知っているかいないかだけで心の持ちようが変わってくる。また、相手によって適切なコミュニケーションの取り方もわかってくるのだ。

私たちは、相手のことをろくに知らないうちに、勝手な判断を下してしまいがちだ。大げさかもしれないが、相手を知らずして勝手な判断を下してしまうことが、戦争にも繋がっているのではないかと思う。

 

日本人同士こそ気をつけたい異文化摩擦

ビジネスの場面における異文化摩擦は何も「国」の違いによることろだけではない。

一番最初に入った会社、周りの先輩や上司、担当したお客さんなど、様々な影響を受けて私たちの価値観は形成される。個人的には、むしろ日本人と仕事をする時の方が摩擦が起きたりする

古くからの友人(日本人)と仕事をした時、まさにこの異文化の壁にぶつかった。

彼とは学生時代からの友人だし、海外志向で興味分野も似ていることから、仕事はスムーズに進むかと思っていた。しかし社会人になってからは、育ってきた文化が全く異なることに気がついた。

私は東京のベンチャー気質の会社で営業や新規事業開発を担当。スピード感や変化対応力、ポジティブマインド、顧客志向が求められた。一方友人は地方の大企業の管理部問で経理や総務の仕事をしており、慎重さ、丁寧さ、リスク管理志向が求められた。

真反対とも言える文化の中で、異なる価値観を知らず知らずのうちに身につけていた。だから最初のうちは、仕事の優先順位やお客さんへの対応の仕方でもめたりした。相手が外国人であれば、自然と異なる価値観を尊重していたかもしれない。しかし日本人の彼に対しては、「言わなくてもわかってくれるだろう」という阿吽の呼吸を無意識に求めてしまっていたのだ

こうした異なる価値観による仕事の揉め事は、いつも時間を割いてちゃんと話し合えば分かりあうことができた。「なぜこの仕事を優先するのか」という理由や背景、考えを一緒に伝えれば、スムーズに進む。しかしここを怠ると、一気に物事が進まなくなる。それどころか、悪化する。

 

まとめ

文化の違いは目に見えにくい。しかし、確実に存在する。

異なる価値観を持つ人と働く時は、相手の言動を早急に判断せず、感情的に反応しないことがとても大切だと思う。「あぁ、これは文化の違いが影響を与えているんだな」くらいに軽く受け流す。そして焦らず時間をかけてお互いを理解していく。

前職の上司が「コミュニケーションは、質と量の両方大事」とことあるごとに言っていたが、その通りだ。

私たちは、忙しさを理由にメールで仕事を投げてしまったり、背景を十分に伝えていないのに自分と同じような理解を相手に求めてしまったりする。でもそれは傲慢でしかない。

外国人だろうと日本人だろうと、コミュニケーションにかける時間を惜しんでは、誰かと一緒に良い仕事をすることはできないんじゃないかと思う。

 

1985年生まれ 東京都出身

経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールの現地法人へ転職し採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのちフリーランスとして独立。現在は開発コンサルタントとして国際開発援助やソーシャルビジネス支援に従事。